「工藤新一の妹」

 工藤新一には、妹がいる。新一と理世は二卵性双生児で、外見はあまり似ていなかった。新一は父親似で理世は母親似だ。新一は好奇心旺盛で外でサッカーをしに飛び出していく子供で、理世はあまり活発的ではなく室内で遊ぶのが好きな子供だった。しかし、そんな双子にも共通点がある。それは父親が推理小説家のせいか、それに影響され推理小説が好きなことだった。双子は根っからのシャーロキアン(アーサー・コナン・ドイルが書いた『シャーロック・ホームズシリーズ』の主人公シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)で、理世はよく容姿の良さから事件に巻き込まれていた。



 理世がいるのは喫茶店で、アフタヌーンティーを楽しめるイギリス風の店だ。双子の兄がサッカーをしに外に遊びに行き、父は執筆中、母と買い物に連れ出されていた理世は着せ替え人形にされるのに疲れ果て母の買い物が終わるまで喫茶店で休んでいることにしたのだ。理世が店員に注文をし終わると理世のキッズケータイが鳴る。それは知り合いの刑事からの電話だった。すぐに出ると居場所を聞かれたので、住所を言うとすぐいくと切られてしまった。まあ、来るかと待っているとサイレンを鳴らしたパトカーが数台停まり、刑事たちが入店してきた。



松田「よぉ、理世。」

『また事件のようね。じんぺーさん』

松田「ちょっとお前の頭脳を借りたくてな。」


 松田陣平は、警視庁警備部機動隊爆発物処理班に所属していたが、ある事件により刑事部捜査一課強行犯三係へ異動した刑事である。警察学校時代の同期の知り合いが理世で、いろいろあって知り合った理世のことを気に入っていた。理世は双子の兄と同じく頭脳明晰で、推理が得意である。しかし兄と違うのは、理世は話を聞くだけで犯人を特定してしまうところだった。


『犯人はアラブ人の使用人だ。
殺害の動機は彼女が一発目の弾丸で何を打ったかに隠されている。』

松田「はぁ!?」

佐藤「わかったわ。目暮警部に連絡を。」


 佐藤美和子刑事が他の刑事に指示を出すとぞろぞろと店を出て行った。松田が動かないので理世は不思議に思い見上げる。松田はそんな理世に笑うと、「ありがとうな」と頭をかきまぜるように撫でると行ってしまった。


『どーせまた夜に来るくせに』

有希子「あら理世ちゃーん。お顔赤くさせてどうしたのかしら?」

『まっ、まま!』


 これが工藤理世の日常だった。




松田「理世の言う通り、犯人はアラブ人の使用人だった。」
萩原「へぇ〜、さすが理世ちゃん」


 工藤邸に集まったのは、理世の知り合いの警察官たちである。松田の親友である萩原研二は2年前に理世によって命が救われた一人だった。


『じんぺーさんたちには恩があるからね、それを返しているだけ。』

萩原「恩って、たった一回誘拐犯を取っ捕まえただけじゃん。」

松田「お前非力だからなぁ」


 ゲシっ

 机の下で、近くにある松田の脛を蹴る。痛みに悶絶する松田に、フンっとそっぽを向く。そう、理世は兄同様に事件に遭遇する確率が多く今でも良く誘拐・人質・ストーカーお手のもの。その日は誘拐され、たまたま通りかかった萩原と松田に助け出されたのだ。その前に彼らの同期に助けられているものだから、呆れられたことを思い出した。


新一「だから理世もサッカーやろうって言ったんだ」

有希子「その運動音痴は誰に似たのかしらねぇ」

松田「ははっ、稽古つけてやろうか?」

萩原「そうだねぇ、お兄さんちょっと心配だよ」


『あら、それは必要ないわ。だってじんぺーさんが守ってくれるんでしょ?』


松田「はぁ!?」


 あらあらと笑う有希子とにやにや笑う萩原。自信満々に言う小学6年生の少女に松田は翻弄され続けている。一人意味がわからない新一と執筆中の父を置き去りにして。
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