02


『なるほど、空閑遊真か』


遠征から帰還すると、紫苑はすぐさまボーダー内の情報を副作用サイドエフェクトを使って読んだ。迅から言われていた、“面白いこと”の1つだろう。


三雲修

空閑遊真

イレギュラーゲート

改良型ラッド一斉駆除

三輪隊と空閑遊真の戦闘

空閑遊真の玉狛に入隊

それで、城戸司令は空閑遊真のブラックトリガーを何がなんでも手に入れようとしている。

ボーダーは3つの派閥で成り立っていた。
1つ目は近界民ネイバーは絶対許さない城戸派、2つ目は近界民ネイバーに恨みはないけど、街の平和が第一だよねの忍田派、3つ目は近界民ネイバーにもいいヤツがいるから仲良くしようの玉狛派

近界民ネイバーに対しては強硬派の対応を取るボーダー最大派閥の「城戸派」と近界民ネイバーに対しては中立、専守防衛的な思考を持つ「忍田派」が本部側にあたる。城戸派にはブラックトリガーが1つに本部隊員の3分の2、忍田派にも1つに本部隊員の3分の1、玉狛派にも1つ。これが現在のパワーバランスだ。

これがブラックトリガー持ちである空閑遊真が玉狛につくことで崩れるだろう。


嵐山「紫苑、おかえり」

佐鳥「ししょ〜〜!」

木虎「お、おおおお帰りなさい!紫苑せんぱいっ!」

時枝「お帰りなさい、紫苑さん」


抱きついてくる佐鳥を受け止めつつ、紫苑は「ただいま」と返す。頭を遠慮なく撫でてくるのは、嵐山の大きくて温かい手だ。心を読まれるかもしれないのに紫苑に触れてくれる人間はボーダーにはたくさんいるが、この2人はかなりの上位にいる。よこしまな考えが全く流れてこないので、心地よさを感じるぐらいだ。


嵐山「今回の任務の件、聞いてるか?」

『まだだけど、着いてからだいぶ覗かせてもらったから大丈夫』

時枝「紫苑さんの副作用サイドエフェクトですか。」

木虎「(本当に便利よね)」

『嵐山隊は悠一に着くんでしょ?』

嵐山「ああ!忍田本部長の命でな!紫苑も指示されてるんじゃないのか?」

『まあね。遠征前に悠一の味方するからとは言ってあるんだけど』

佐鳥「あ〜、また2人で企んでるんでしょ!?」



本部と支部のパワーバランスが崩れることを別としても“ブラックトリガー”持ちの近界民ネイバーを放っておけないと思うのが風間蒼也だろう。元チームメイトや弟弟子、弟子たちと戦うのは気が引ける。それを差し置いてでも、紫苑は空閑遊真を守りたかった。


佐鳥「迅さんや出水先輩ばかりずるいですよぉ〜」

木虎「紫苑先輩の弟子っていうだけで、佐鳥先輩もずるいと思いますけど」

嵐山「紫苑はモテモテだな!」

『いや、准くんに言われたくないけどね…これ終わったらご飯行こうか!』

時枝「いいですね。」







夜の暗闇に紛れ、城戸派である太刀川隊・風間隊・三輪隊・冬島隊の当真の混成チームはにて待ち構えていた迅悠一と相反する。何を言っても引かない迅に風間はイラつきを感じていた。三輪は眉間のシワが17歳で取れなくなりそうなぐらい寄せている。


迅「"俺一人だったら"の話だけど」

風間「なに……!?」


放棄された民家の屋根に現れたのは、嵐山隊だ。真っ赤な隊服は、夜でも目立っていた。隊長の嵐山、時枝、木虎が揃っている。狙撃手の佐鳥はバックワームで隠れているようだ。

嵐山「嵐山隊現着した 忍田本部長の命により玉狛支部に加勢する!」


太刀川「忍田本部長派と手を組んだのか……!」


太刀川の頭の中には兄弟子である紫苑のことが頭によぎる。忍田本部長が嵐山隊のみを使うだろうか。己の腹心である星野紫苑を使わないことがあるのだろうか。紫苑は遠征から帰還後すぐに己が通っている夢ノ咲学院に通学した。新しくアルバムを出すことになったから通学しなければならないと嬉しそうに笑っていた。


迅「嵐山たちがいれば、はっきり言ってこっちが勝つよ。おれの副作用サイドエフェクトがそう言ってる。
おれだって別に本部とケンカしたいわけじゃない。
退いてくれるとうれしいんだけどな、太刀川さん。」

太刀川「なるほど"未来視"の副作用サイドエフェクト
ここまで本気のお前は久々に見るな お前の予知を覆したくなった」

迅「やれやれ そう言うだろうなと思ったよ」


ガンッ


ーーーーートリオン供給器官破損、緊急離脱ベイルアウト


太刀川「はっ?」

古寺「奈良坂先輩っ」


迅の言葉と同時に三輪隊の狙撃手奈良坂透が緊急離脱ベイルアウトした。
トリオン器官ど真ん中を射撃する変態は忍田派では思い当たるのは一人だった。


風間「三上、距離は?」

三上「〈推定ですが、約800mです〉」

三輪「紫苑さんかっ、」


迅「おっ、タイミングぴったりだな」



『おー、どんぴしゃ』



出水「げっ、ししょーいるの?」

当真「今回はノーマルトリガーで狙撃手スナイパーのセットかよ」

風間「ブラックトリガーを使われたらやっかいだな」

太刀川「いや、ブラックトリガーは使わないでしょ。星彩せいさいは対トリオン兵用だ。」


紫苑はノーマルトリガーとブラックトリガーを使い分けていた。それは、星彩せいさいが超後方支援向きのブラックトリガーであるからだ。近距離戦闘には全く向かないため、紫苑はノーマルトリガーを持つことを許されている。紫苑は完璧万能手パーフェクトオールラウンダーで、戦闘や防衛任務で組む隊によってトリガー構成を変えている。


『まあ、あとは公平を落とせば仕事はしたかな〜』

迅「〈いいんだよ、風間さんと太刀川さん落としても、よっと〉」

『え〜、あの人たちなんでか僕の射線読めるからなぁ』


嵐山隊と太刀川と風間隊の攻撃を躱しながら、紫苑と通信する。
一方、紫苑は狙撃手の基本である"一度打ったら狙撃場所を変える"を実行する。グラスホッパーで飛ぶ。方角だけはバレてるから、次はガードされそうだ。


嵐山「〈紫苑と風間さんは同じ隊だったし、太刀川さんは弟弟子だからか?〉」

迅「〈同じ種族だからじゃない?〉」

『どう言う意味かなぁ?』

迅「〈そういう意味だよ〉」




風間「玉狛と忍田派が手を結んだということはブラックトリガー3つと本部隊員3分の1、戦力の上で完全に我々を上回ったということだ。ブラックトリガーの奪取はより緊急性を増した。失敗は許されないぞ、三輪。」

三輪「わかってます、風間さん」




迅「〈紫苑はどうする?嵐山の方についてもいいぞ〉」

『ん〜、そうだなぁ。どうやらこっちに送り込んでこないみたいだし、落としやすそうな奴から落としていこうかな。』

迅「〈お前それ、ただ自分の弟子たち落としたいだけだろ〉」

『え、ばれた?』

佐鳥「〈佐鳥のことは落とさないでくださいよ!?〉」

木虎「〈なんで、味方落とすと思ったんですか…〉」


「ししょーならやりかねない!!!」と叫んで反論する佐鳥に、『僕どう思われてるわけ…』と呟いた。




風間「紫苑はどうする。あいつの副作用サイドエフェクトじゃバックワームどころかカメレオンも効かないぞ。」

三輪「(接触感応能力サイコメトリーか…)」


紫苑の副作用サイドエフェクトは、接触感応能力サイコメトリー
自身の体表面を接触させることにより、人間や物体から現在の情報を読み取ることができる能力である。紫苑はトリオン体越しに地面を伝い、誰がどこにいるかまでならわかる。


太刀川「紫苑のことだ。自分の弟子ばっか落とそうとするだろうな」

出水「げっ」

太刀川「とりあえず、来る方向さえわかってればブラックトリガーでないかぎり防げるだろ。」

風間「適当すぎるだろ。あいつは変化弾バイパーのトリガーも入れてるはずだ。」

太刀川「いいんだよ、紫苑は変なところ抜けてるから射手シューター用と攻撃手アタッカー用のトリガー入れてねぇかもだし」




『あ…』
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