男の娘になりたくて 14

結局、俺は女の子になりたいんだろうか。
その夜、散々一人で遊んだ後、眠れないままに心の中でそう自問自答してみた。
そうすると女の子として男と付き合いたいわけじゃ決してないという考えに行き着くんだけど、その一方で何故だかすっきりしない俺もいる。

やっぱり女装するのは好きだし、スカートを履いたり可愛くメイクするのも大好きだ。
そのくせ男に抱かれろと言われても絶対無理なくせに、ゆずが男に抱かれていると思うと酷く興奮するのは紛れも無い事実だった。

一度、男に抱かれてみればいいのかも知れない。
不意にそんな思いが頭を過ぎって、俺は激しく頭を振ってその思いを否定する。
いやいや、絶対に有り得ないだろ。
そう思いつつも、何故だか自分をゆずだと思った途端に考えが変わるのだ。

もしかしてゆずに変装した時限定で、俺は男に抱かれたい願望が生まれるんだろうか。
その考えが頭を掠めたその時、頭の中が一気に晴れた感覚とその考えが浮かんだ衝撃に目が眩んだ。

うそだろ、冗談だろ。
そう思いつつ、俺の手は男の指先が触れた場所へと伸びる。

「――!」

殆ど無意識だったその行動に、誰よりも驚いていたのは自分自身だった。
女装をした時点で『私は女よ』とばかり女の子に成り切ってしまうわけだけど、決して本心では女として男とセックスしたいわけじゃない。
だけど、この時の俺は確かこの奥には前立腺があったよな…と、ゆず目線じゃなく、俺自身の男目線でそこが気になったのだ。

もしかして俺は女の子になりたい(所謂、性同一性障害)んじゃなくて、男の娘(女装した男の子)になりたいんだろうか。
つまりはあくまでも自分は女の子だとの認識はなく、女装したゆずで男に抱かれてみたい願望があるって。

「それって、ホモ確定じゃん…」

思わず呟いた俺の声は、ワンルームの部屋に虚しく響いた。


初めて女装で(ゆずとして)街に繰り出したこの日が後々にも影響を及ぼすぐらいの特別な日になるなんて、この時の俺は思いもしなかったのだった。



第1話『男の娘になりたくて』完結
2015/08/23


Bkm
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