カミングアウトは突然に 12

そういや筧さんのことを、

『バージンで可愛い子が大好物なヤリチンだから、出来るだけ二人きりにはならないように』

店長はそう言ってたっけ。
僕は別に可愛いわけじゃないけど、バージンだから僕も狙われたりするのかな?

「狙われる……」

なんか実感が沸かない。
僕の周りには、ノンケしかいなかったから。

だから僕は今まで恋らしい恋をしたことがないし、好きな人がいても当たり前のように片思いだった。
幼なじみやクラスメート、一通り王道な関係の子を好きになったけど、最近は先生や先輩だったりな年上が多い。

「あり、だったりするんだけどな」

相手が筧さんなら全然ありだ。

ハッと我にかえり、慌てて掃除を再開した。
男子トイレの掃除を終え、女子トイレの掃除に取り掛かる。
邪念を追い払うかのように、一心不乱に便器を磨いた。


「只今戻りました」
「お疲れさん。じゃあ、次は筧と一緒に返却ビデオを棚に戻して行ってくれるか?」
「はい。わかりました」

次の仕事は返却されたビデオを棚に戻していく仕事で、これはかなり大変そうだった。
小まめに戻してるけど、どうしても溜まってしまうらしい。
それを営業前や閉店後に纏めて棚に戻していく。

「岩佐君はこっちのをお願い」
「はい。わかりました」
「この作業はかなり面倒だけど、商品の陳列場所が覚えられるからしっかりな」
「あ、はい。了解です」

見れば、殆どが映画のDVDだった。
他にもお笑いやテレビ番組のバラエティービデオ、ミュージックビデオ。
趣味に偏ったDVDは多岐に渡っていて面白そうだ。

「あ…」
「ん?どうした?」
「あっ、いえ」

アダルトビデオは筧さんが全部担当してくれるらしく、僕の手元にはないことに気付く。
そう言えばアダルトビデオは一般のビデオとは別の部屋に置いてあり、そのアダルトコーナーのレンタルカウンターには一人の店員さんしかいなかったっけ。
アダルトビデオは18禁だから、高校生の目に触れないようにとの配慮なんだろう。

「えーと、これは新作だから……」

ホント言うとちょっと残念だったりするけど、4月まではアダルト関連の仕事も我慢かな。
ビデオはお兄ちゃんに貰ったDVDがあるし、来年になったらまた別の系列の店に借りに行こう。
ネットレンタルにしてもいいし、とにかくAVにはこれからいくらでも触れられる。

実際にやってみたら殆どが単調な作業の繰り返しで、これなら僕にも出来そうだった。


Bkm
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