元ヤン上等! 2

めんどくせえから自分から喧嘩は売らないが、売られた喧嘩は必ず買っている。
100%勝てるってわけじゃないけど、今まではそれなりに上手く切り抜けてきた。

ここに来て、卒業が取り消されたら元も子もないけど、やっぱ買うっきゃないっしょ。

その時、校舎のドアが開いて、

「瀧川先輩!」

俺を呼び出した後輩がやって来た。



「遅い」
「すんません!ちょっと帰りのSHRが長引いちゃって…」

走って来たのか肩で息をしているこいつは一コ下の後輩で、いかにもヤンキーな見た目をしている。
昭和のヤンキーよろしくリーゼントに剃り込みを入れていて、有名なヤンキー漫画が好きすぎてこの世界に入ったらしい。

「で、なんの用だよ」

呼吸が幾らか落ち着いて来たところを見計らって、そう聞いてみた。

「先輩、俺……」
「どうでもいいけど、俺は来週には卒業するんだからな。今更卒業が取り消されたら…」

さりげなくそう牽制してみたら、

「先輩!お願いします!一発、やらしてください!」

可愛い後輩くんは真っ赤な顔をして、直角90度に頭を下げながらそう言った。




「………」

はあ?
何言ってんの、こいつ。
やらしてくれって…

咄嗟に思い付いたのは『殺(や)る』で、けど、殺らしてくれは聞いたことがないなと首を捻る。

「お願いします!一生の思い出にするから…一発だけっ!」

今度は土下座しながら地面に頭を擦り付けられて、俺は慌てて後輩を立ち上がらせた。

「はあ…仕方ねえなあ。一発だけでいいんだな?」
「えっ、マジ?!いいんっすか?」

頭を上げた後輩の顔はさっきより赤くなっていて、

「ああ、いいぜ。男に二言はない」

そう言って、潔く右の頬を後輩に差し出す。
『一発やる』を『一発殴る』だと解釈したからなんだけど、

「先輩っっ!!」
「うおっ?!」

後輩は差し出した俺の頬を余裕で無視すると、

「ちょ、何すんだよ!!」
「先輩、俺、ずっと先輩のことが好きで……ああ、夢みてぇ」
「!!!」

俺をフェンスに押し付け、俺の学ランのケツを捲くってズボンを下げて尻を丸出しにした。

「や、やめ…ひぁっ?!」

出来る限りの抵抗を試みるも、俺より一回り近くがたいのいい後輩はびくともしなくて、ここに来て、ようやくさっきのは『犯らしてくれ』だったんと理解した俺だった。


Bkm
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