CLAP



↓お礼とは名ばかりの短文。





「困りましたねー」

「困ってるようには聞こえないぜ、旦那」

街の入り口近くにある宿屋のロビー。外は吹雪いていて数メートル先が見えないような状況だった。
ロビーにある椅子にゆったりと座っているジェイドと、その近くに立っているガイは両者ともに疲労をみせつつ、部屋で休もうとはしなかった。ガイは全身にまだうっすらと雪をかぶっていた。

「我々の抜けたパーティで無事に街に辿り着けるか……心配しているんですよ、これでも」

ゆったりと足を組み直して肩をすくめてみせた。その動作を不動で見つめるガイは眉間にシワをよせる。

「どこがだ」

ぼそりといつもより低い声で入ったツッコミは聞こえなかったことにしたジェイドが億劫そうに立ち上がる。

「じゃぁ探しに行きますか」

暖炉の近くで乾かしていた厚手のコートを手に取るとフロントの奥に声をかけてさっさと外へ向かう。
探しに出ている間にルーク達が来たら部屋に案内してもらう手筈を整えていたらしい。

「探す気あったんだな」

「あなたと一緒に来さえすれば、探すつもりはなかったのですがね」

その言葉をガイは嫌みと判断するべきか迷いながらも後を追うように扉へ向かった。
雪除けと防寒を兼ねた二重の扉の間で、捜索範囲を分ける。逸れたのが街からそう遠くないこともあり、見つからない場合も30分後には戻ってくるように決めた。
宿屋から街の入り口までは2人並んで歩いていく。ふとガイがジェイドに向き直った。

「ん? 呼んだか?」

「いいえ、呼んでいませんよ」

「……ルークか!」

微かに聞こえたらしい声の方角に向かってガイが走り出す。走り出すと言っても、雪に足をとられていて歩くより少し早い程度だったが。

「おーい! ルゥゥクゥゥゥ!」

ガイより後方を歩いているジェイドにもよく聞こえる程の声量で叫びだす。

「ナァタリアァァァ! ティィィアァァァ! アァァニスゥゥ!」

返事しろー! と付け足して、ざくざく歩き続ける。少ししてから、

「ガイー!」

と声が聞こえた。

「おっ! 旦那、探す手間が省けたなっ……どうした? 変な顔だぜ?」

豪雪の中でもはっきり分かるほどに歪んだジェイドの顔が間近に迫る。そしてガイの目の前でわざわざ大きなため息をついた。

「見つかったようなので、私はお先に帰らせて頂きますよ」

そうはっきり伝えるとガイが何かいう前に直ぐに踵を返す。腑に落ちない所は多々あれど、今はルーク達と合流することを優先させるべきと判断して再び名前を呼んだ。












なんとなく複雑な気持ちのジェイドさんでした。
言うほどでもないって判断した憤りって、処理に困りますよね。

 
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