6話



きっとこんな寒い日を狙ってテロを行うに違いない、と、乾燥した大地をパリパリと踏みしめて特別攻撃班班長であるベルーガは考えた。あまりにも安易な思考を鼻で笑いながら、ベルーガは静かに神経を尖らせる。刺すような冷気が頬に痛い。隣でにこにことしているデイライトも同じようだ。ピリピリとした空気が、ここが戦場であることと、憎む相手がいることを連想させる。

「隊長」
「…なんだ」
「賭けでもしてみる?軍が来るかテロが先か、なーんて」
「…下らん」
「言うと思いましたよう」

ぷうと頬を膨らませて言うデイライトを横目で睨みながら、ベルーガはひとつだけため息を吐いた。どうにも嫌な予感しかしない。日が暮れかかっているとは言え、晴れ間ひとつない空がそんな考えに同調しているようだ。

「…雨が降りそうですねえ」

ぽつり、デイライトがそれだけ呟いた。珍しいこともあるものだ。空を気にすることなどあったのか、と、ベルーガは瞬きだけでそれに応じる。再三見上げた空は今にも泣き出しそうだった。

「雨が降れば、」
「…どうした?」

言葉を途中で切って地面を見つめるデイライトを不審そうにベルーガが見やる。影や負の感情とは無縁に見えるデイライトの表情が空と同じように曇っているのを見逃さなかったのだ。だが、再び顔をあげたデイライトの顔面には笑みが貼り付けられていた。

「爆弾なんかがしけっちゃえばいいのにね」







どおん、と、派手になにかが炸裂する音がしたのは指定されたエリアから少し離れたところだった。

「…どういうことだ」
「オレにキレられてもなー…大方予測外れじゃないの」

デイライトの返答にベルーガは低く唸る。爆発音が聞こえたのみで、この殺風景ななかでも炎のようなものは目視で確認できない。爆発の規模は小さいようだ、と、ベルーガはそちらの方向から目を逸らした。ポケットに放り込まれたままだった携帯がけたたましく鳴る。

『お疲れ様です 撤退命令が出ています』
「どういうことだ エリアは?」
『エリアDの4bです。軍の壱部隊がもうすでに到着しています。詳細は帰社後に』
「…そうか、了解した」

舌打ちと共に通話を切る。そんなベルーガの背後から、「リジーももう帰るって」とデイライトの間延びした声がかかり、それが更にベルーガを苛立たせた。

「あは、今回も手がかりなし、ってね」




***

「…で?」
「だぁから、ごめんって言ってるじゃない」
「ごめんで済めば警察はいらん」
「ああ、無くなったね数年前に」
「………」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでくださいよ、今日も元気で飯がうまい!!ってね」
「…エモニエ、」
「死者も怪我人もなし、でしょ?よかったじゃないですか、平和」

ぱらりと地図を捲る指先を愉快そうに揺らして、ピンク髪が歌うように言う。

「まあ予測が外れたのはちょーっとイタかったかな、ごめんなさい、班長?」













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