世界は未完のまま終わる | ナノ


Long novel


 世界は未完のまま終わる
 ―想いに終わりなんて、ない。
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01


 レースで出来たカーテンの奥。蔓が幾重にも巻き付いた大きなベッド。大輪の真っ赤な薔薇があちこちに咲き誇っている。それ以外は質素な造りだが、清潔感がある。その上に横たわるのは、愛しい人。艶やかな銀色の長い髪が、漆黒の上質なシルクのシーツの海に広がっている。瞳を閉じたまま、規則正しく繰り返される呼吸。綺麗な長い指を腹の上で組み、愛しい人は死んだ様に眠っている。
 欠落の多い未完成な「私」への魔力供給、そしてあの扉の封印。それらに大量の魔力を消費しているため、彼はずっと眠り続けている。せめて私への魔力供給が必要なくなれば、目を覚ましてくれるだろう。私はこの人の力になりたい。ならば私は、自分の足で、力で歩かなければ。

あの人の隣に立てるのなら。
あの日、私に向けてくれた優しい眼差しをもう一度取り戻せるのなら。
あの人を縛り付ける禁断の扉さえも、開けてしまえる。

例えどんな手段だとしても。
どれだけ他人を犠牲にしても、あの人の為なら厭わないわ。


――純粋な想いは、やがて狂気に変わる。


Section 00. End.


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