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あれから程無くして、私達は小さな公園で休息を取る事になった。流石の臨也もあのままの状態で長距離を逃げ回るのは辛かったと見える、いつもは常に涼しげなその顔に今はうっすらと汗が浮かび、呼吸も若干乱れている。ちょっと貴重な物を見た気分。静雄の方もまた、深追いはせずに居てくれたらしい。今度お礼を言いに行くついでにしっかりと誤解も解いておこうと思う。
 
「っは、全く、君のお陰で、余計な運動する羽目になったじゃないか」
「元はと言えばこうなったのは全部臨也のせいですけど」
「まさかあんな何も無い所で転ぶとは、思わなかったんだよ」
「躓いたんじゃなくて疲れて足がもつれたの!」
「普段から身体動かさないからだろ、ダイエットになって良かったんじゃない?」
「元々そんなに太ってないし!」
「十分重かっ「黙れ」
「…まぁ良いや。それよりも足、見せて」
「やだ」
「無理矢理覗かれたいの?」
「蹴るぞ」
「良いから、ほら」
 
何度も催促されて、渋々スカートの裾を上げて膝を出す。よく見ると砂や小石も付いている傷口は、早くも血が固まりかけて黒ずんだ色をしていた。
 
「うわ、痛そ」
「痛そうじゃなくて痛いんです」
「一度洗っておいた方が良さそうだね。立てる?辛かったらまた運んであげるけど?」
「さっき息切れしてた奴が何言ってんの?普通に歩けるし」
 
公園の隅にある水道で足を洗う。ストッキングはもう使い物にならないので、その場で脱いで捨ててしまった。濡れた素足にあたる風が冷たい。
 
「…何かこの体勢SMみたい」
「は?何馬鹿な事言ってるの、さっさとしなよ」
「女王様とそれに傅く下僕みたいな」
「せめて忠誠を誓う騎士とか言えないの?」
「えー、臨也は騎士って柄じゃない」
「貴女様の為に、私の全てを捧げる事を誓いましょう。例えこの身が朽ち果てようとも、魂は永遠に貴女様のお傍に」
「ちょ、やだ、きもい」
「手の甲にキスとかした方が良かった?」
「そういう問題じゃない」
「…取り敢えずこれで良いか」
「え、臨也ハンカチとか持ってたの」
「結構失礼だよね、それ。俺だってこれくらいは持ち歩いてるよ。…はい、出来たよ」
「…歩き難い」
「膝だから仕方ないだろ。途中でコンビニ寄って絆創膏買うよ」
「ん…ありがと」
 
高そうなハンカチでした。
 
next!!
 
 
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