18:54
 
「待ちやがれっつってんだろ、臨也あぁぁっ!」
「ったく、しつこい男は嫌われるよ!」
 
時に細い路地裏を縫う様に、時に大通りを人混み避けつつ逃げる事数分。臨也に腕を強く引かれる度に近くを掠め飛んでいく自販機、ごみ箱、標識その他諸々に青褪めては、縦横無尽に走り続ける臨也に合わせて足を動かすのに息を切らせて顔を赤らめる。あ、これ、私死ぬんじゃないかなって思った瞬間ついに足がもつれました。咄嗟に臨也が支えてくれたお陰でみっともないヘッドスライディングをかます自体だけは避けられたけど、持ち上げ切れなかった右足が地面を擦った。
 
「ったぁ」
 
流石にすぐさま体勢を立て直す事は出来ず、視線を足へと落とせばストッキングは無残に破れてるわ膝は痛々しく擦り剥けてるわ血は出てるわでもう散々だった。静雄とはここまでの間にある程度の距離が空いているが、このままではすぐに追いつかれるはずである。今この時、飛来物が何も来ないのは静雄も私が転んだ事に気付いたからだろうし。
 
「全く、君って本当に鈍いよね」
「はいはいごめんなさいね…ってちょっと何してんの!」
「怪我人は大人しくしてなよ」
 
臨也が呆れたように笑った後、急に私の隣に膝をついたかと思えば、次の瞬間全身を浮遊感が襲った。落下への恐怖から反射的に臨也の首にしがみ付く。つまるところ横抱き状態、俗に言うお姫様抱っこである。
 
「これくらいなら自分で歩けるってば!」
「歩いてたらシズちゃんに追いつかれるでしょ、黙って掴まってなよ」
 
言うが早いか再び駆け出す臨也。この細身のどこにそんな力があるのやら、その速度は先程一緒に走っていた時よりも多少落ちたという程度。本気の臨也が一人で逃げれば、静雄を巻く事など恐らく簡単なのだろう。尤も、静雄が自販機等を投げつけるのではなく、素手で殴る事を目的に追走に全力を当てた場合は解らないが、少なくともさっきまでは一応、私に合わせて走っていたのだという事は解る。まぁ、こんな事になったのは全て臨也の自業自得だと言ってしまえばそれまでだけど。
 
見上げた顔は珍しく真剣な表情をしていました。
 
next!!
 
 
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