18:49
 
何だかんだで買い物も順調に進み、ここへ来てようやく私の気分も上昇傾向となり、手錠の事はやっぱり納得出来ないし臨也はうざいし訳解んないけど、これだけ色々買って貰ったからもう少しくらいは我慢してやっても良いかなとかちょっと、ほんのちょおぉっとだけ思ったり思わなかったりして。このまま何事も無く新宿に帰ってあわよくばすぐに解放でもして貰えたなら、仕方なく、仕方なくだけど許してやっても良いかなとか思わなくもない感じだったのに。臨也の「おっと」とかいうあまりに緊張感の無い声に一瞬の気を取られた瞬間、いきなり空いてる左手で抱きしめられて、え?道端で何してんのコイツ?なんて思うよりも早く、ブォン!とかいう風切り音がしたかと思えばそのすぐ後にガシャアァァン!と派手に金属製の何かが落下した様な音が聞こえて、ついでに私の気分も一気に叩き落された訳です。
 
「いぃざぁやああぁぁぁっ!!」
「やぁ、珍しく来るのが遅かったじゃない。今日は俺の方からわざわざシズちゃんに会いに来てやったって言うのにさ」
「会いに来ただと?胸糞悪くなるような事言ってんじゃねぇ、こんな所で何してやが……あ?なんでお前が居るんだ?」
「し、静雄、ああああのね、これには凄く深い訳がぶぶぶ「見て解んない?俺達今デート中なんだよね。随分前から付き合ってるんだけど、あれ?ごめん、言って無かったっけ?」
 
臨也の胸元に顔を押し付けられる様に言葉を遮られ、反論どころか呼吸すらままならないのを良い事に好き勝手ほざく臨也マジふざけんなコイツ。
 
「…本当か?」
「ち、ちがぶぶぶ「彼女に野暮な事聞かないでよ。その歳になっても女性経験零の君を気遣って敢えて黙っててくれたんだろうからさ。まぁ、こうして見つかっちゃった以上もう隠す必要もないんだけどね。という訳で、さっさとどっか行ってくれないかな?とっても邪魔なんだよね、そこに居られると。俺はあくまでシズちゃんに会いに来ただけであって、別に立ち話する気はないからさ」
「ふざけんな、どうせ手前が一方的にそいつの事を付き合わせてるだけだろ。もしくは弱みでも握ってんのか」
「俺達の愛にそんな物は必要ないんだよ」
「だったら手前を殺してから確かめてやるよ!」
「ちょ、静雄、待っ」
「やれやれ、ここまで話しが通じないとは思わなかったよ。仕方ないな、おいで」
「おわっ」
 
それまでずっと臨也のポケットの中へと押し込められていた左手が、突然臨也の右手によってその手首を引かれた事によって、数時間ぶりに露わとなった。じゃらりと音を立てて揺れる鎖。お互いの手首に掛ったままの手錠。静雄の投げた自販機が先程まで臨也、と私が居た場所を横切って行く。
 
「手錠…?おい、どういう事だ!待ちやがれ!」
 
静雄も、周囲の人々も、当然ながら私達を繋ぐ奇妙な存在に視線を向ける。あぁ、これ後で絶対ダラーズの掲示板辺りで噂されるんだろうなぁ…新宿の折原が公衆の面前で手錠プレイしてた、とかならまだ良いけど。あ、でも写メとか載ってたら困るわ。なんて色々不安要素は浮かんでくるけれど。
 
今は臨也に合わせて走るのに精一杯でした。
 
next!!
 
 
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