11:47
 
「さーて、シズちゃんはどこかなー」
 
これが漫画ならコイツの後ろにはウキウキワクワクとかいう擬態語が付くのだろう。それくらい目に見えて楽しそうな臨也と私が降り立ったのは、池袋駅東口。
 
「……帰りたい」
「来て早々何言ってるの。行きたいって言ったのは君の方だろ?」
「言い出したのはアンタですけど」
「最終的に乗って来たのはそっち。全く、何でも好きな物買ってあげるからって言われて折れるなんて、今時小学生でも珍しいと思うよ。ホント、君って子供というか、現金というか」
「く…っ!」
 
数十分前の私をぶん殴りたい、出来るだけ全力で。話しの途中から上手く誘導されていると気付いていた筈なのに、目先の誘惑に負けて命を危険に晒すなんて馬鹿も良いとこだ…!こうなったら静雄と絶対鉢合わせしなさそうなルートを取りつつ出来るだけ高額な買い物を大量にするしかない。それしかこの男に一泡吹かせてやる方法は無い、大丈夫、私なら出来る。自分を信じろ。
 
「じゃあ最初は「東●」え?」
「●武の地下で晩御飯の買い出ししよう」
「さっきスーパーで一通り買ったよね?」
「もっと高い食材が食べたい、か、蟹とか」
「ふーん、まぁ良いよ。行き先は君が自由に決めるって条件だったしね」
 
取り敢えず駅周辺のデパートは安牌だ。静雄がここを訪れる事はまず無いだろう…と思う。こうして買い物をしてる間にじっくり次のルートと行き先を考えて行けば良い、完璧だ。
 
「で、次は?」
「下着売り場見たい」
「女性物の?別に構わないけど、俺が居るって事ちゃんと解ってるよね?」
「勿論。そこで店員からも周りの客からも白い目で見られれば良いと思う」
「へぇ。…何してるの、下着売り場ならあっちだけど?」
「え、え、マジで行く気?」
「君が行きたいって言う以上、今の俺に拒否権は無いからね。ところでさ、彼女が彼氏をそういう買い物に付き合わせるのって、自覚のある無しは別にしても、つまりは普段自分がどういう下着を身につけて居るかとか、どういうのが好みなのかを相手に教えるって事なんだと俺は思うんだよね。要するにその相手になら見られても良いよってさ。となると、俺は今君から遠回しなアプローチを受けてる事になる訳だ。まだそういう関係に至るには早いかなって思ってたんだけど、そんな遠慮する必要無かったって事かな?ごめんね、気付いてあげられなくて。シズちゃんを冷やかすのも楽しそうだと思ったけど、今はもっと良い事を見つけた気分だよ。さあ、さっさと買い物を済ませて帰ろうか。あ、因みに俺はああいうのが好みだな、色は「ごめん私が悪かったからマジで黙って今すぐに」
 
私の方が白い目で見られてました。
 
next!!
 
 
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