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「ちょ、もう、ホント信じらんない。何なの、馬鹿なの?」
「いやぁ、一度見てみたかったんだよね、手錠で繋がれた二人がどうやって生活を共にしていくのか。適当な奴等にやらせても良かったんだけど、どうせなら俺も楽しみたいし、君がこの状況でどんな対応をするかも気になったからさ。こうすれば一石二鳥どころか、それ以上って訳だ」
「外して、今すぐ外して」
「話し聞いてた?俺が知りたいのは手錠をはめられた君がどういう反応をするかじゃなくて、この状態でどうやって生活するか。鍵なんて、当然出す訳ないだろ」
「何で私なの、他の人でも良いじゃんっ」
「俺の周囲にいる人間で、最もこの状況下に陥れやすく、かつこの状況を継続させやすいのが君だったから。曲がりなりにも一緒に生活するにあたって、俺の気分を極力害さずに居てくれそうなのが君だったから。というか寧ろ、最も楽しませてくれそうなのが君だったから。これでも配慮してあげたつもりだよ?普通の手錠じゃなくて、わざわざ間に長さのある物を用意してあげたんだしさ」
「そんな気遣い要らないから」
「え、何?もっと近くに居たかったって?」
「違ぇよ!そんな所に気を回せるならもっと根本的な所に気付けっつってんの!」
「そんな事より俺、そろそろお腹空いたんだけど」
「だから何」
「君もあの後すぐに最低限の準備だけして飛びだして来たんでしょ?化粧も手抜きだしさ。冷蔵庫にあるもの使って適当に何か作ってよ」
「何で私が、無理矢理こんな状況にされてる私が!アンタの為にそこまでしなきゃなんないの!?」
「過ぎた事をいつまでもどうこう言ってたって仕方がないだろ?もっと生産的な事をしようよ」
「……アンタが生産的とか言うと変な意味に聞こえる」
「それ、君がいやらしいだけじゃないの?お望みとあらば応えてあげなくもないけど?」
「寄んな!作れば良いんでしょ作れば!」
 
臨也が椅子から腰を上げようとした所で、慌てて踵を返してキッチンに向かった。が、ビィンという鈍い音と共に左手が引かれる。後ろの方で小さく「いてっ」という声が聞こえた。
 
「ちょっと、気をつけてよ。今、君と俺は一心同体なんだからさ」
「その表現止めて気持ち悪い」
「そうか、俺も君の行動に合わせないと駄目なのか。やってみると中々に面倒だなぁ」
「なら今すぐ止めれば良いと思うよそれが良いよそうしよう」
「仕方が無いから手伝ってあげるよ」
「止めるという選択肢は徹底無視か!」
 
やれやれと言わんばかりに肩を竦めて椅子から立ち上がる臨也を見て歯軋り。やれやれとか言いたいのはこっちの方だ。っていうか仕方が無いって全部自分のせいだし!キッチンに来ても臨也は手伝う素振り一つ見せず、繋がれた鎖が私の行動を邪魔しないようにとくっついて動き回るだけ。正直うっとうしい、というかうざい。
 
「……てか冷蔵庫何も無いんだけど」
「あぁ、食事はいつも外で済ませるか波江に任せっきりだから」
「牛乳と卵だけで何作れっての」
「食パンならあるよ」
 
朝食は牛乳とラピュタパンになりました。
 
next!!
 
 
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