いつの頃からか、私の家には、雨の日に決まって来客があるようになった。
初めてその事に気が付いたのは、四月の初め頃。何の気無しに外の様子を見てみようとカーテンを開けてみた途端、足元から小さな何かが飛び出し、酷く驚いたのを覚えている。それは、一匹の黒い猫だった。口の周りから胸元にかけてと、足元の毛が靴下を履いた様に白く、鋭く光る灰色の瞳で雨の中からじっとこちらを見詰めていたその猫は、それからも雨の日になると決まって庭の窓辺へと現れるようになった。そこは屋根がある為に、余程酷い横殴りの時でも無ければ雨は当たらない。やがて、私はその猫がここで雨宿りをしているらしい事に気が付いた。それからというもの、私はこの小さな来客のお蔭で、雨の日が少しばかり待ち遠しくなった。
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【桜雨】 桜の花の咲くころの雨
140316
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