お気に入りの猫がかけっこしているマグカップを手に取ってキッチンへ向かう。
棚からブラウンの粉が入った瓶と、冷蔵庫からはミルクを取り出した。あとは…ああお湯だ。指先も凍るように冷たい今日、これを忘れてはいけない。
「何をしているんだい?」
「ココア作ってるの」
後ろから肩口に顔を寄せる習を無視して、用意した3つをぐるぐるかき混ぜる。比率によって味が大分変わってしまうから大変だ。
「んんんんんんふうんん!」
「Pardon me?」
「ミルク多すぎたみたい……」
牛乳の味しかしないよ…と唸る彼女を尻目に粉の入った瓶を持ってラベルに目をやると、へんてこな瓶のキャラクターが描かれていた。どうやら双子らしい。
「(…ビンホーテン………)」
「パジャマ?」
「うん、寒くなってきたから新しいの買って来たよ。ついでにスリッパも」
「確かお揃いと言っていたね。どんなキュートなデザインなのか楽しみだよ」
ごそごそと先程持ち帰った袋を漁る。
「はい、これ」
白くてふわふわでもこもこ。ご丁寧にフードに角までついてしまっている。
正に冬にうってつけの寝間着…もとい着ぐるみ。
ぽんと足元に置かれたスリッパも、またそれと同じ素材で出来ていた。
「随分と………キュートだ……………」
全身ふわもこ羊着ぐるみのつきやまさん。
「ははひふはおまあらい」
「鼻水が止まらないと言っているよ」
「ほーひーほんで、あっはまっはのおいえなあったのあな……」
「珈琲を飲んで温まったのもいけなかったのかなと悩んでいるようだよ」
あんていくに来てからずっとティッシュの山に顔を埋めている。季節の変わり目で風邪をひき始めているのだろうか。
「月山さんよく分かりますね…」
かぜにちゅうい。