Water monologue


※イメージ元→TIME OVERより





時は移ろう。唯刻む。
何気ない日常、呼吸する自然、貴方が笑っている今も。


あの青い空は、私の手なんかじゃ全然届かない位高くて、青々とした草原を私は弟と一緒に何時も駆け回ってた。


こんな未来化した国で、私の両親は小さな牧場を営んでいたの。元々はもっと街の中心に住んでたみたいなんだけど、私が生まれる2、3年前にのどかな暮らしを求めて、あの辺境に引っ越したらしいわ。
両親は二人ともなんだか呑気、っていうかとってものほほんとしてたから、街では結構浮いていたのかもしれない。
弟はかなりやんちゃで、小さい時は取っ組み合いの喧嘩をしてよく私が怒られたっけ。

そんな私の小さな幸せを、あの日“あいつら”が全て奪っていった。



私は両親の力になりたくて、農学部がある大学に入学したの。大学は街の方にあったから、「街の事も知ってくると良い」って寮暮らしをさせてくれたわ。
弟も家から遠く離れた高校に通っていたから、私達は外の世界を知る事が出来てる、って勝手に思い込んでた。
寮での暮らしはとても楽しかったわ。農学部だから重労働だったけど、それも気にならない位に動物や仲間と一緒にいるのが楽しかった。

そんなある日、寮に一本の電話がかかって来たの。連絡はお互いに時々取ってたから、お母さんか弟かなって思ってた。
でも、廊下ですれ違った女子は悲しそうな顔をして、男子は気の毒そうにこっちを見てきたわ。



(……嫌な予感がする)



私は胸騒ぎを覚えて事務室へ急いだ。



『もしもし…………………そんなっ! じゃあ両親はっ…………弟は、………はい、分かりました。お願いします』


電話の声の主はうちの牧場の近くに住んでるおばさんだった。
おばさんの話を要約すると―私達の住む村が「クロノス」とかっていう団体に土地を明け渡す事が決定、だけど私の両親は最後まで抵抗を続け、奴らに殺された………その時に弟はいなくて、今はおばさんがかくまってくれている。
おばさんからは、「私と旦那でなんとかするから、学校は通い切りなさい。それから、しばらくは学校の外に出るのは止しなさい。良いわね?」という言葉を残して電話を切られた。




―その数日後


私が牛の世話をしている時、奴らは現れた。
私は訳が分からないままに強制連行され、友人はなんとか引き剥がそうとしてくれたけど、教授達に止められてたわ。……辛そうに目を伏せながら。






私は目覚めて、直ぐに別の部屋に連れ込まれたわ。私は凄い恐くて、でも恐れてはいけない、って思って堪えてたの。
幼稚園に通い始めたばかりの子供、ヨボヨボになったお婆さんや、森で暮らす小動物、何処から連れ込んだのか分からない猛獣……………私は様々な動物と呼ばれるものと合体させられたわ。



どのくらいの時が経ったのか、気が付けば私の体は、もう人の形をしていなかった―おぞましい、「時間獣(ケモノ)」の姿。
合体の回数が増え、だんだん力が抑えきれなくて暴走する事が多くなった私は、時が止められた空間に閉じ込められたわ。………何年もの間、ずっと。





「合体させられる度に、私は相手の記憶を見る事が出来たの。とは言っても、一瞬の情景とか断片的なものに過ぎないけれど。
みんな最後に願うのは―帰りたい。口を揃えて言うの。動物もそうだし、みんな私に訴えてくれたわ。
だからね、貴方は忘れないで欲しいの。私の、私達の存在を。
早く他の時間獣も解放―倒してあげて」




時雄がとどめを刺すと、時間獣と呼ばれた物体は倒れ、同時に幾数の魂がそれから出てきた。



『ありがとう。……………倒してくれたのが、…………弟によく似た、優しい貴方で、良かっ…た……』


女は透けた両手で時雄を包み、微笑みながら消えた。





written by KIYOKA

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