戦争が存在する理由 その子は聞く。 「お兄ちゃん、どうして戦争はなくならないの?」 黒髪をかきあげながら少年は答える。 「その意味を知りたいかい?」 うん!と元気よく答えたあと表情を曇らせ男の子は語る。 「お父さんが戦争にね。ちょうへいされちゃったんだ」 まだ意味もわからないだろう言葉を使い拙く説明する。 「それからお母さんが大変になったから、早くお父さんが帰ってきてほしいから」 なくしたい、その理由を問う。 「そうか、そうだね」 口元は弧を描いているものの眼は笑っていない。 見事に記号化された笑みだった。 「戦争に理由なんてないんだよ」 男の子はきょとんとした表情で少年を見上げる。 「どうして、理由がないのにするの……? 」 「それはね、対面を保つため。簡単に言うと国が国であるためにだよ」 理解できなさそうに男の子は少年にさらに問いかける。 「国が、国であるため?」 「そう、国から人がいなくならない様、その為に食料やその他のものを手に入れるために」 けれども、と少年は次を語る。 「一番は住んでいる人が逃げない様に、かな」 国から人がいなくなればそれは国ではない。王一人だけの敷地を国とは言えまい。 「だから、戦争をするの?」 幼い声は恐怖していた。 「そう、戦争をして逃げたら巻き込まれると人々を脅すために」 大義の為に人を殺す為に。 「だから、戦争はなくならないんだよ」 その言葉を聞くと男の子は帰って行った。 虚ろな表情をその顔に浮か べて。 「そう!もはや戦に正義はなく、意味もない!」 誰もいなくなった広場で口に出す空しい行為。 「敵に見せ付けろ!責務を負った者の生き様を!」 そうつぶやくと彼は気づいたように口にした。 「まあ、僕みたいな死なない人間には意味もないんだけどね」 次は何所へ行こう。 今の僕は何処にでも行ける。枷も無く、自由だから。 「だからこそ何所に行こうか迷うんだよね」 独り言を呟きながら彼は何処かへと歩みを進める。 進む先は誰にもわからない。彼にもわかっていないのだから。 詩「戦の定義」より (9/16) |