*

その後あたしは無事に支度を終えて、皆とともに夕飯をとった。


「うんめぇ!煉骨の兄貴のマンネリ化した飯とは大違い!」

「蛇骨てめぇ…ぶっ殺すぞ!」

『ふふっ…ありがと!』


皆の反応に笑顔が零れる。
喜んでもらえたらあたしも嬉しくなるんだよなぁ。そう思いながら、ふと蛮骨に顔を向けた。蛮骨は美味しいって言ってくれるかな。

あたしはお味噌汁を飲んでいる蛮骨を少し気にしながら見た。
するとお椀から口を離した蛮骨は、


「名前の作った飯は美味いよな」


独り言のようにそう呟いて嬉しそうに微笑んだ。その一言にあたしの心臓は動きを速める。


そして―、

「ごちそーさん」


ご飯を全て平らげた蛮骨は満足そうに部屋を出ていく。
その間、あたしは無意識のうちに彼の姿を目で追っていた。







その後一人になったあたしはお気に入りの場所、縁側に座って考え込む。
先程から考えるのは蛮骨のことばかり、無性に彼の存在が気になって仕方ないのだ。

台所でのことも恥ずかしかったけど別に嫌じゃなかったし、正直言うともっと触れられたいと思ってたり。料理を美味しいと言ってもらえた時も、皆とはまた違った意味で嬉しかった。


『あたし、好きになっちゃったんだ』

「名前?」

『っ!』


その時まさに悩みの種である蛮骨に背後から声をかけられ、あたしは大げさなくらい体を震わせた。
どうやら風呂上がりらしい蛮骨は浴衣姿で長い髪を風になびかせこちらを見ている。


『ちょっと!驚かせないでって言ってるでしょ!』

「驚かせないでって…そんなに突発的に声かけてねぇだろ」


そんなんじゃない。今のあたしは蛮骨が側にいるだけでドキドキしてしまうのだ。


「ったく、早く寝ろよ?風邪引くぞ」

『…あ』


行ってしまう、そう思った時無意識に声が出た。


『待って!』

「…ん?」

『少し話があるの…』


深刻な顔で言葉を紡ぐあたしに蛮骨も黙って縁側に座る。
少しの沈黙の後、あたしはゆっくり話し出した。


『さっきあたしのこと好きって言ったの…本当?』

「俺は嘘はつかねぇ」

『だったらあたしも嘘はつかない』

「…?」

『負かされてばっかりで悔しくて、認めてなんてやりたくないけど…あたし、蛮骨を好きになっちゃった』

「え…」


遂に認めてしまったこの気持ち。

二人の間に流れる沈黙があたしには永遠のように長く感じられた。
もう既に蛮骨の気持ちは知っているのに少し怖くなる。



少しの間黙っていた蛮骨はやっと口を開く。


「本当か?」

『さっき嘘つかないって言ったで……キャッ!』


言い終わる前に突然蛮骨に強く抱きしめられた。


「こんなに嬉しく思ったのは初めてだ」

『蛮骨…』

「やっと手に入ったんだ。これでお前は俺のものだな」

『…うん。じゃあさ、蛮骨もあたしのものになってくれる?』


遠慮がちにそう言うと、蛮骨はフッと軽い笑みを漏らして今度は優しく抱きしめた。



「当たり前」




end




(あとがき)

My Girl、無事に完結しましたー!
今回愛さまリクエストで蛮骨の甘い言葉で落とされるヒロイン or ヒロインの甘い言葉で蛮骨を落とす、どちらか管理人の好きな方で書いてほしいということでしたので今回前者の方で書かせていただきました。
喜んでいただけたら嬉しいです!
この度は素敵なリクエストをありがとうございました!

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