まるで子どものように笑うところも、涙を流すところも、拗ねるところも、全てが愛おしい。

お前を甘く誘うのは冗談なんかじゃない。ただ―、

My Girl

―になってほしいだけ。





「あったかーい…」


屋敷の縁側に座ってうーんと背伸びをする少女、名は名前。屋敷にお手伝いさんとして住み込んでいる。


木々の間から差し込む暖かな日の光に目を細める。


今日は晴天。戦のない今日はずっとこうやってのんびり過ごしている。

暖かな陽気にうとうとしてしまう。お手伝いさんがこんな所で眠ってしまうなんて本当はいけないけど…。まぁ、いっかとゆっくり目を閉じた。


「名前」


その時、後ろから聞こえてきた声にハッと目を覚まされる。
振り向くとそこには三つ編みを結った男が微笑みを浮かべて立っていた。


『蛮骨』

「今寝ようとしてただろ」

『うっ…』


図星です、はい…。
しかし、からかうようにクスクスと笑う蛮骨に少しだけ反抗したくなった。


『寝てないよ!蛮骨じゃあるまいし、日頃ずっと寝てると思ったら大間違いだよ!』

「でも体左右に揺れてたぜ」

『う…』


言葉に詰まってしまった。

何も言い返せない、完敗だ。
蛮骨との言い争いじゃ必ずと言っていいほど負けてしまう。
悔しいっ…いつか負かしてやる!


「無理だぜ、お前が俺を負かすなんて」

『はっ!?何で…』

「思いっきり声に出てたぞ」


目を見開いて愕然とするあたしの様子を見て今度は大笑いする。


『うー…』


蛮骨のやつ、絶対あたしを子ども扱いしてる。そう思いながら蛮骨を恨めしげに見つめるが、結局何も言い返せずに顔を背けた。


「何拗ねてんだよ」

『拗ねてないし!』


顔を覗こうと近づいてくる蛮骨から体をずらしてそれを断固阻止する。そんなあたしの行動を見て蛮骨は一瞬動きを止め黙ったが…。

一瞬クスッと笑う声と、


「本当お前は可愛いな」


それだけが聞こえ、突然後ろから腕が伸びて体が引き寄せられた。


『…っ!?』


蛮骨に後ろから抱きしめられている…?
何で?何でだ、これっ!?

状況がうまく飲み込めなくてあたしの頭は錯乱状態だ。


『ば…蛮骨!?』

「そんな反応なんてされたらよ」


もっと苛めたくなっちまうぜ?
そう耳元で囁かれるとあたしの顔は更に赤く染まる。


「なぁ名前。俺さ、お前のこと」

『…え?』



―その時、

「大兄貴ー!」


蛮骨を呼ぶ声があたし達の元に届いた。この声は恐らく煉骨だろう。
足音は段々こちらへと近づいてくる。


「煉骨の野郎、邪魔しやがって」


蛮骨は仕方なさそうにあたしの体から手を離し立ちあがる。


「続きは後でな」

『…っ!』


そう言っていたずらに笑うと蛮骨は行ってしまった。その場に残されたあたしはというとずっと固まったまま…。


今のは一体、何だったのだろう。


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