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「―い!起きろ!」

『ん…』

「おい、名前!起きろ!」


薄く目を開けると蛮骨が名前の顔を覗きこんでいる。


『ふぁ、どうしたの?まだ真っ暗だよ』

「お前に見せたいものがあるんだ」

『え?ちょっ…』


蛮骨は名前の腕を掴んで廊下へと連れていく。しかし縁側へと出てきた名前は外の様子を見て目を丸くした。


『嘘…』


先程まで激しく降っていた雨はすっかり止み、空には雲ひとつない。


「てるてる坊主のおかげだな」

『え…』


てるてる坊主?
でもあれは結局諦めて吊るさなかったはず。


しかし柱を見るとそこにはてるてる坊主が八つも吊るされていた。しかも下手だがそれぞれちゃんと七人隊と名前に似せて顔が描かれている。


『蛮骨が作ってくれたの?』

「俺だけじゃねぇよ。あいつらも全員手伝ってくれたんだ。まぁ野郎が作ったものだから上手いとは言えねぇが…」




「むー…どうすんだ、これ」

「違いますよ、大兄貴。もうちょっと丁寧に包んでください」

「蛇骨、何をつけてんだ?」

「んー?犬耳♪」

「「「「「「おいっ!!」」」」」」


そんなこんなで時間はかかったもののなんとか七人隊と名前の分の願いをこめたてるてる坊主八つが出来上がった。


「晴れたらいいなぁ」

「あぁ…いや、絶対晴れる!」






『嬉しい…』


蛮骨の話を聞き、名前から自然と笑みが零れる。


「そんじゃあ星見に行くか!」

『…うん!』







七人隊が住んでいる屋敷から少し歩くと拓けた丘へと辿り着いた。以前名前が見つけた絶好の観測場所だ。


『うわぁ…こんな綺麗なもの見たの初めてだよ』


空には数えきれないほどの沢山の星。
名前は目を輝かせて呟く。


「……」


―確かにこんな綺麗な星空、初めて見た。だけど空を見つめる名前の横顔もまたそれを超えるほど綺麗で、蛮骨は思わずその横顔に見入った。



『あっ流れ星!』


名前の声にハッと我に返り蛮骨も空を見上げる。
そこには空に光る無数の筋が。


「流星群だな」

『綺麗…あっ願い事しなきゃ!』

「願い事?」

『流れ星に願い事すると叶うの…』

「ふーん…じゃあ俺も願い事しようかな」


二人は暫く流れ星に向かって手を合わせて祈った。



『はー!お祈りできた!叶うといいな…』

「名前は何を願ったんだ?」

『んー内緒』

「なんだよ、内緒って…」

「だって恥ずかしいんだもん。蛮骨は?」

「俺?俺の願いはな…」






“名前と一緒になれますように”



その言葉を聞いた瞬間、時が止まった気がした。



「え、蛮骨。それって…」


自分の耳を疑った名前は驚いて蛮骨を見る。蛮骨は名前の方へと向き直りじっと目を見つめた。


「この願いは叶うのか?名前…」



―これは夢…?
名前の目から涙が零れる。


『勿論叶うはずだよ』

「名前…」


蛮骨は涙に濡れた名前の頬に手を添える。そして――、


幾千もの星に囲まれて二人は口づけを交わした。


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