ねぇ、知ってる?流れ星に願い事すると、きっと叶うんだ。
私が願うのはただ一つ。
Stella〜星に願いを〜
ミーンミンミン――
「「「「「「「あちー!」」」」」」」
梅雨の時期が到来し、ジメジメとした蒸し暑さが七人隊を苦しめる。
「マジでくそ暑いな!煉骨!何とかしろ!」
「何とかって…無理ですよ。水も撒いたし、やれることは全部しました!」
突如無理難題をふっかける蛮骨に煉骨は冷や汗を流しながら答える。
その隣で蛇骨は煉骨の頭を虚ろな目で眺めながら呟いた。
「煉骨の兄貴はいいよな、サッパリしてて」
「おい、喧嘩売ってんのか?」
「チッ…苛つくぜ!」
暑さもだが蛮骨を苛立たせる原因は他にもあった。
仕舞いには貧乏揺りまで始める始末。そんな彼を見て煉骨は溜息をついた。
「(頼むから早く帰ってきてくれ…)」
「ただいまー!」
パァァ!
擬音に例えるならこのような感じだろう。名前の声がした途端、蛮骨のイラついた表情が一気に晴れた。
『ごめんね、遅くなって』
名前は重そうな荷物を両手に抱え居間に入ってきた。
「おう。…ってか何だその荷物は?」
『これ?風鈴とか蚊取り線香とか花火とか。他にも夏の風物詩いっぱい持ってきたんだ!』
「へぇ、珍しいモンばっかだな」
『そうでしょ?例えばこの風鈴…』
名前は立ち上がって襖の側に風鈴を取り付けた。
取り付けられた風鈴はチリンチリンと涼しげな音をたてて揺れる。その音を聞いて、横になっていた睡骨がこちらを振り向く。
「おぉ、涼しくなった感じがするな」
『でしょ?』
その時名前が見せた太陽のような眩しい笑顔に七人全員が思わず頬を染めたのは言うまでもない。
「おっ、名前!これは何だ?」
『あ、それは花火だよ!』
「へぇー」
初めて見た花火に目を輝かせる蛇骨。そんな彼を見て名前は微笑んだ。
『夜みんなでする?』
「煉骨の兄貴、いいだろ?」
「まぁ、少しぐらいなら…」
「やったー!」
その後、名前は蛮骨を廊下の方へと秘かに誘った。
「どうした?」
『あのさ、花火した後一緒に星を見に行かない?』
「…星?」
『そう!これ…』
蛮骨に雑誌を広げて見せる名前。
そこには『夜のロマンチックデート』という見出し(蛮骨はよく理解出来なかったみたいだが…)と満天の星空の写真が載ってあった。
『あたしの国って空気が汚れてて星が綺麗に見えないし、こっちだったらちゃんと綺麗に見えるじゃない?それに…』
「それに?」
『蛮骨と二人きりで見たいし』
名前は頬を赤らめ俯く。
「名前…」
蛮骨もまた一瞬頬を赤く染めたが名前を見つめ、赤らんだ頬へと手を添えればそれとなくいい雰囲気になる。
だが―、
「名前ー!これは何だー?」
「!!」
部屋の中から名前を呼ぶ蛇骨の声が聞こえてきた。
『蛇骨、よっぽど私が持ってきた物に興味があるみたい。じゃあ、今夜楽しみにしてるね!』
そう言って名前は蛮骨をその場に残し部屋の中へと入って行く。
――折角いい雰囲気だったのに…。
蛮骨は一人虚しく溜息をついた。
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