同じ空の下で | ナノ


一方、その頃煉骨の部屋。


『蛮骨、大丈夫かな』
「大兄貴に任せときゃ大丈夫だって」


一人で行かせたことを少しだけ後悔しつつも、蛮骨は頼りになる首領。皆十分理解しているため、特に心配する素振りは見せない。

だが、そんな一行のもとに突如聞きなれた男の叫び声が届いた。これには皆一転して動揺を露わにする。


『ば…蛮骨!?』
「何かあったのかもしんねぇ!行くぞ!」
『うん!』



叫び声を聞いて五人が急いで駆けつけると、物置の側で壁に張り付く蛮骨の姿があった。


「大丈夫か、大兄貴!」
「気をつけろ。ここ、何かいやがる」


彼の表情には恐れが浮かんでおり、それが皆の中で一層危機感を募らせる。
呻き声は、未だやまない。


『……』
「おい、唯!危ねぇから近づくなって!」
『待って。これ…』


唯は蛮骨の制止を振り切って物置に近づく。よく見てみれば、物置の戸に小さな穴が空いている。音はここから漏れているよう。また、そっと手をかざしてみれば生暖かい風にふんわりと包み込まれた。


『ここから風が漏れて音が鳴ってたんだ。……きゃっ!?』


思わず大きな叫び声をあげてしまった。足に何か得体のしれないものが触れたのだ。背筋を震わせながら目線を落とせば、そこには毛のびっしり生えた鼠が一匹。
これは幽霊の仕業なんかじゃない。その旨を伝えようと振り返る。しかしその瞬間、唯の目に信じられない光景が映った。何とあの泣く子も黙る七人隊の面々が縦一列になって気絶しているではないか。ある意味、幽霊の存在よりも恐ろしい光景だった。







*

その後、唯等は煉骨の部屋へと戻ってきた。


「やっぱり幽霊なんかいなかったな」
「だから言ったろ、蛇骨。怖がるから見えねぇモンも見えるようになんだよ」


蛮骨と蛇骨は揃って鼻を鳴らす。つい先ほどまで仲良く揃って気絶していたとは考えられない言い様である。


「分かったら、もう自分の部屋に行って寝ろ!頼むから寝かせてくれ」
「…仕方ねぇ、戻るか」
「そうだな」


皆それぞれ、布団をまとめて自分の部屋に戻る準備をする。これで問題は万事解決のはずだった…。


「唯、お前も早く部屋に戻らねぇか」
『……』


唯は未だ布団の上で佇み、部屋から出ていく気配はない。それに気づいた煉骨が少し強めの口調で戒めるものの、相変わらず俯き黙ったまま。よくよく思えば、この部屋に帰ってきた時から唯は一度も口を開いてはいない。


「#name#?」
『…憎い』
「あ…?」
『ハゲが憎いー!!』
「うわぁぁっ!」


唯は突如煉骨に襲いかかった。かの叫び声に部屋に戻ろうとしていた蛮骨達は驚いて振り返る。


「おい!唯、何やってんだ!?」
「待て睡骨!…あれは唯じゃねぇ!」


慌てて止めに入ろうとする睡骨を止めたのは蛮骨。蛮骨は気づいていた。煉骨を襲う今の唯はいつもの彼女とは違うことに。


「憑りつかれてる。どうやら唯が言ってた霊の仕業のようだな」
「なんだよ、その幽霊ハゲが好きなのか?」


唯はハゲという二言をずっと繰り返しており、蛮骨と蛇骨は悠長に顔を見合わせる。


「そんなこと言ってないで早く助けてくれ!」


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