同じ空の下で | ナノ


ボスン――、


「ウグッ…!」


薄暗い空間の中、突如くぐもった声が響き渡った。唯は突然枕を投げ、それが蛇骨の顔に命中したのだ。


『こういう時はやっぱり枕投げでしょ!』
「…ってめぇ、唯!!」


赤くなった鼻頭を抑えつつ、負けじと己の枕を掴んで投げ返す蛇骨。
しかしその枕は唯の顔の横を通り過ぎ、今度は蛮骨の顔面に直撃。


「あ…」


蛮骨の顔に減り込んだ枕はすぐさま重力に従い、ボトと鈍い音を立てて落ちる。すると忽ち現れ出でたのは修羅を思わせる恐ろしい表情だった。


「…蛇骨?」
「や、今のはわざとじゃ…!」
「っるせー!!!」


蛮骨は枕を二つ手にとり、一気に投げつけた。
こうして煉骨の部屋は一瞬にして枕投げ大会の場に。蛮骨の投げた枕は煉骨の頭に当たり、蛇骨の投げた枕は睡骨の顔に当たり、一番の被害者はこの二人だ。

一方で唯はというと、ほぼ一騎打ち状態の二人を傍らで応援していたのだが―。



「オォォォォー…」



突然の事だった。どこからともなく響いたその低音が鼓膜を震わせた。これには枕投げ大会と化していた部屋にも沈黙が流れる。



『今さ、何か聞こえなかった?』
「き…聞こえた」
『これってまさか……』
『「幽霊!?」』


唯と蛇骨は声を揃え、一つの疑念を口にした。
その瞬間、蝋燭の火が一気に消える。


『「ギャーッ!」』


まさかの出来事に混乱した唯と蛇骨は叫び声をあげ、狭い部屋内を駆け回る。次第に蛮骨達まで巻き込み、闇の中で混乱が巻き起こった。


「まだ死にたくねぇよ!犬夜叉ーっ!」
『ちょっと蛮骨!どさくさに紛れてどこ触ってんのよ!』
「俺じゃねぇよ!霧骨だろ」
『何だと!?霧骨、お前地に埋めるぞ!』
「痛っ、俺じゃねぇって!踏み潰すなよ!」
「あ゙、誰だ俺の頭掴んだの!敏感肌なんだぞ!睡骨、お前か!?」
「誰がてめぇのハゲ頭に触るか、移るだろうが!やめろ顔擦んな、眉毛が消える!」



元からねぇだろうが!
皆々口を揃えて睡骨に対してツッコミをいれた、その時だった。再び妙な唸り声が。心なしか、先ほど聞こえたものよりも音が大きくなっているように感じる。


『やっぱり、気のせいじゃないよね』
「蛮骨の大兄貴、見てきてくれよ!」
「は、何で俺が!?」
『こんな時、頼りになるのが首領ってもんでしょ!』
「そうだそうだ!」


あからさまに嫌な顔を浮かべる蛮骨を二人はじりじりと追い詰め、背後では煉骨等も唯に賛同するかのように静かに蛮骨を見つめる。

蛮骨が折れるのも時間の問題だった。納得しない様子ではあったものの、最後には諦めたように盛大な溜息をついたのだった。


「あ゛ー分かったよ!行けばいいんだろ!」




ほぼ強引に言いくるめられて、一人で音の原因を調べに行くことになった蛮骨。何で俺がこんなこと。ブツブツと文句を呟きつつも、封印らしきお札が貼ってあったあの物置へと向かう。


「やっぱり、あの物置からか」


一歩一歩足を踏み出すにつれ、比例して呻き声も大きくなる。蛮骨の額に汗が浮かんだ。
触らぬ神に祟りなし。お札なんて剥がすんじゃなかった、と今更後悔するも時既に遅し。元より蛮骨がお札を剥がしたことより始まったことなのだ。非が自分にあることを一応は自覚しているようで、何とか自分で解決せんと、警戒しながらと物置へ近づいていく。
この角を曲がれば、問題の物置。一層警戒を高めた、その時。足に何かが触れた――。


「……っ!」


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