「ふー」
溜息をつきながらもトントンと軽やかな音を出し、包丁で野菜を切っていく。
つい先程まで意気込んでいたのだが、結局起きて最初にすることは朝飯の支度ってわけだ。
いつからこんな習慣がついたものか…。
あぁ、紹介が遅れたな。
…といっても俺が誰なのか、もう分かるだろう?
飯を器用に作れる奴なんぞ、俺以外にいるものか!
まぁ一応名乗っておく。
七人隊の副将並びに作戦参謀役を受け持っている、レレ…いや何でもない、煉骨だ。普通に煉骨と呼んでくれ。
今日は何というか、俺の日常ってやつを教えようと思う。
あらかじめ言っておくが……悲惨だぞ?だが俺の苦労を分かってもらえる最善の手段だ。
だが今回の俺はひと味違う。
ん?どういうことかって?
まぁひとまずこれを見てみな。
懐から取り出したのは一枚の横長の紙、その名も『猛獣使いの掟』。猛獣を安全に手なずけるため、長い時をかけ必死に考え、編み出した策。多数の項目からなっている。
だが、猛獣をそのままの意味でとってもらっては困る。
俺にとっての『猛獣』。
最も危険な男。最年少なのに俺より立場が上。
――あぁそうだよ。奴のことさ。
俺ら七人隊の頭、蛮骨。
何故か俺は奴の保護者。
それで日頃色々と世話をするのだが、何かと苦労するのだ。
既に俺の胃腸は悲鳴をあげている。
だから、少しでも苦労しなくて済むよう策をまとめた。
何で『猛獣使いの掟』にしたかって?
『蛮骨使いの掟』にして本人の目に入ればどうなると思う。俺の胃は即爆発する。
しかし『猛獣使いの掟』にしておけば…、そうだな、蛇骨が飼ってる地獄の番犬『犬夜叉』のことだとシラをきれるだろう?
実にいい考え。どうして今まで考えつかなかったのだろう。
まぁ、そんな訳だ。この策の通りに動けばもう苦労することはないだろう。今日から快適な日常を送るんだ。
この俺が作った策だからな。絶対、ぜーったい失敗などあるわけがない。
今からこの掟の素晴らしさを見せてやる!
prev|
next