一輪の花 




ズバッ


「ぎゃああぁ!」


1人、また1人。

私は一体何人斬っただろう、この手で。


「おい。」

『...』

「夢!」

『!』


ハッとして振り向くと、晋助が立っていた。

「今日はもう終いだ。戻るぞ。」

『...うん。』


ふと晋助の刀に目を向けると、血で真っ赤に染まっていた。


『晋助、刀錆びるよ。』

「ん? ああ。代えがある。」

『服も真っ赤。』

「そういうお前は...元から赤だったな。」


私の戦用の服は全て赤色。

甲当ても額当ても全て。


「敵の血を浴びても自分の血が滲んでも、赤い服なら目立たねーってか。」

『...何よ。』

「ククッ、お前らしいぜ。」


ヒュッ、と 晋助は刀に付いた血を軽く払った。


「お前があの天人共の血に染まらないのはいいが、お前の血が見えねーのは考えモンだな。」

『私の血濡れた姿でも見たいの?』

「そんなんじゃねーよ。分からねえじゃねーか、どこ怪我してるか。」

『...鬼兵隊隊長の言葉とは思えない。』

「ばーか、気にかけるに決まってんだろ。好きな女のことなら。」

『...』

「でもよォ、戦の間は赤い服を着続けろよ。」

『結局賛成なの? 反対なの?』

「さあなァ。」

『まったく...』

苦笑いを浮かべると、晋助は珍しく微笑んでいた。

だから私は満面の笑みを返してやった。


『帰ろう。』



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血に染まらないお前は、まるで戦場に咲いた一輪の花。

その笑顔を守るためなら、俺は喜んでお前の分も染まってやるよ。





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