何も大丈夫じゃないです




「知ってるか?テツヤ。結婚は離婚前提の契約なんだよ。」

…突然何を言い出すんでしょう、この人は。僕の冷めた視線を知ってか知らずか、赤司君は話を続ける。

「そもそも契約というのは裏切りそうな相手と結ぶもの、つまり破られることが前提なのさ。忠誠の証なんて嘘もいいところだ。」

「そういうものでしょうか。」

「そういうものさ。」

すると赤司君は1枚の紙を取り出し、僕の前に置いた。

「これは…」

「お前に結婚を申し込んでいる者のリストだそうだ。」

びっしりと並ぶ名前に驚愕した。よく見るとどれも名家の姓であり、更によく見るとどれも男性の名前である。

「…僕は男ですが。」

「知ってるよ。テツヤ、以前よく涼太に女装させられていただろう?それを見た奴らがお前を女と勘違いしたらしい。」

「(あの駄犬め…)」

衝動のままに目の前の紙を破り捨てたかったが、如何せん相手は選りすぐりの名家、名家、名家…下手なことは出来ないと、手を引っ込めた僕の手前で赤司君がそれを鋏で切り裂いた。

「ちょ、何やってるんですか!」

「バラバラにしてるんだが?」

「そうじゃなくてっ…進んで名家と不和になる気ですか?」

「フッ、こんな奴ら取るに足りないよ。僕にはミラコロファミリア以外にも手札があるからね。」

「…初耳なんですが。」

「ファミリーの誰にも言っていないからね。まあ取り敢えず、心配ご無用とだけ言っておこうか。」

ニヤリと妖しい笑みを浮かべながら紙吹雪と化したリストを得意の錬金術で燃やした。そして表情はそのままに、赤司君は僕の手を握り、言い放った。

「僕は結婚なんて脆い繋がりじゃなくて、一生逃れられないしがらみでお前を閉じ込めるつもりだから大丈夫。」

「何も大丈夫じゃないんですが。」



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「形ある物で繋ぐのもいいな。首輪と足枷、どちらがいい?僕は両方を推すよ。」

「(誰かこの人を燃やして下さい。)」







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