遭遇してみた




いきなりポケットに手を入れた空ちゃんは細い円柱状のものを取り出し、俺の足元の地面に突き刺した。

「ど、どないしたんや空!今何したん!?」

『謙也先輩達に結界張らせてもらいました。』

「結界!?」

『そこから絶対に出ないで下さいね。』

突然の事態に動揺してる俺らを横目に、空ちゃんは次に陣を描き始めた。珍しく焦っているようで、特徴的な間延びした話し方も抜けておった。地に広がっていく複雑な陣。後少しで描き上がる、丁度その時やった。

《ククク、狙い通りだ。》

急に重力が2倍、いや3倍になった。例えとかじゃなくて、もう立っていることも動くことも叶わなかった。

「なんっ…」

「お、鬼…」

濃い邪気の奥から姿を現したのは、デカい鬼やった。

『…酒呑童子。』

「酒呑…童子っスか?」

『鬼の頭領。最強最悪の鬼っす。』

《言ってくれるなァ、虹未来家の小娘。》

『狙いはボクっすか。』

《当然だ!》

最初の拳は避けられたものの、相手は妖怪。加えて鬼のボス。次の瞬間には爆音と共に空ちゃんが壁に叩き付けられていた。

『う…』

「空!」

《ククッ、呆気ないな。拍子抜けだ。》

「お前っ!空ちゃんを離すばい!」

ドンドンと結界の壁を叩くがびくともせえへん。酒呑童子もまるで俺らは眼中に無いみたいに視線を向けることすらしない。

『…おかしいと思ったんすよ。神通力で守られてる四天宝寺中の敷地内に鬼門が現れるなんて。しかも現れる筈もない方角に。』

《あの程度の神通力なぞ、オレには無いに等しいわ。》

『ボクを誘(おび)き出すために鬼門を…』

《そうだ!》



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空ちゃんを抑えつけていた酒呑童子の掌に力が加わった。ミシリ、嫌な音が確かに聞こえ、空ちゃんの声も途絶えた。










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