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山に登り始めるといつも転がってる死体とは別の真新しい死体がいくつも転がっている。

うっわー内臓でてんよマジちびりそう。更に死体の山と化した坂道をその死体を避けて登っていくと青い軍旗が落ちている。そして傷つき動けない敵兵がかろうじて生き延びた状態で岩にもたれかかっている。

あ、こいつ火縄銃もってら。たしか戦国時代からだったもんな、銃って。いや、ぶっちゃけわかんねぇけどな!

残念ながら東京湾に沈められたので武器なんてもん持っていないのでこいつの火縄銃とそこらへんに落ちてる刀を拾う。お、刀って以外に重いわ。うっわー、つうか本物、モノホン。ナイフなんかよりも切れ味すごそうだよなあ。勢いあれば腕一本楽々切れるんじゃね?


頂上へ向かうほどに重症の敵兵が増えていく。その間を通っていく俺にたまに声をかけてきた奴もいたけれどもそれよりもじぃちゃんの方が気になるから無視。

お、向こうに敵軍の動く旗が見えてきた。



――やっとこそ頂上にまで来るとじぃちゃんの術で生き返った死体兵と何故だか時代に似合わずというより本来の戦国の時代よりも先を進んだ髪形、リーゼントやらなんやらな髪型の兵とが互いに獲物を向け合い、交えあい戦をしていた。

おお、時代劇でみるものなんかよりも凄ぇ、マジもんだマジもん。

携帯あれば動画撮影したいくらいだ。


今の今までつっかかって来なかったのが奇跡だったのかその獲物をぶつけ合っている死闘の中を通ろうとすると急に肩をつかまれ引き止められた。

やっと、俺の事に気付いたのか馬鹿な奴だなあ、と振り返るとじぃちゃんの鎧兵だった。

『何を・・・してい、る』
「じぃちゃん探しにきた。何処にいるんだ?」

『晴政さまは、』

ガシャン!と音を立てて横に倒れる鎧兵。動かなくなったそいつが立っていた目の前には一つの刀が伸ばされていた。

倒れ動かなくなった鎧兵から浮き出るのはじぃちゃんのアノ光の球。ふわりと浮き出たソレは恨めしそうにその横からしゃしゃり出てきた奴へと向かうとあっという間に二つに斬られシャボン玉のように破裂。
消滅。

「餓鬼が戦に何の用だ」

まるでというかまんまヤクザな顔の男が返り血を受けた体でこちらを睨んだ。つうか怖ぇまじ何コイツ。

本物のヤクザよりもヤクザらしい表情つうか頬傷がさらにまた怖いよ。

つうかこいつ餓鬼って言ったよな。確かに餓鬼ってよ!俺、二十歳なんですけど、まだ二十歳なんだけどおおおお!?あれか、体格か!ひょろっちい身体してるからか!テメェら武士みたいに毎日鍛錬なんかしてねぇから筋肉マッチョじゃねえんだよ!ひょろいからって馬鹿にすんじゃねえぞゴルァ!

「俺は二十歳だ!餓鬼じゃねえ!つうかお前何すんだよ!じぃちゃんの場所教えてもらおうとし、た、の―――――何でもねえ!!」

ついいつもの勢いで本音をべらべらと話してしまった。

じぃちゃんが誰なのかはわからないだろうがこいつは多分、敵兵だ。その敵兵の敵兵にじぃちゃんの居場所を教えてもらおうとしただなどと言ってしまえば俺はコイツの敵、ということをわざわざ教えてることになる。

なんて俺は馬鹿なんだ。
どうか聞いてませんように。後半の本音聞いてませんよーにっ!

「何?・・・つまり、テメェ・・・敵さんか」

「いやいやいやいやいや何のことっすかー?俺、敵じゃねえし?ほら、俺、防具つけてねぇし光の球ボワァーってでてこねえし?つうか俺、死体じゃねえし?な?俺は敵さんじゃ、」


「俺の目は誤魔化されねえ、二十歳といやあ立派な大人だ。―――覚悟はできてんだろうな?」


「できてません!!」


だからさいなら!!!!と刀を振りかざし男に投げて逃げる。坂道はそりゃあつらいし死体の腕とか顔とか踏みつけちまったけど死ぬよりかはまだそっちのほうがマシだ。南無阿弥陀仏。踏んじまったけど許してくれよぉ!


人気が少なくなってきた頂上、頂上ではやけに雷や謎の波動球みたいなものがたまにはしっている。じぃちゃん、なんか波動球みたいのも出せてホントマジですげえよな。

俺も、できるかな?

頂上前の急坂を登り尽くすとなんか片手に三本で両手合わせて六本の刀を持った奴がじぃちゃんと対峙していて、つうか刀重いのに何あいつ何あの握力。林檎つぶせるんじゃねえ?いやいや、そんな事よりもじぃちゃんだ。


じぃちゃんは六本刀の男の太刀筋を喰らったのかセンスの悪い上着はボロボロで所々に血が滲んでいた。額からはあの奇妙な小さい雷が当たったのか焦げ目のついた傷口から血が垂れている。

痛そうだじぃちゃん・・・。


じゃなくて!




「じぃちゃぁあぁぁぁぁあぁああん!!!」


俺が大声を上げると背を見せていた六本刀の男が振り返って驚愕の顔でこっちを視た。じぃちゃんもそのかわらぬ目が少し開いていて同じように驚いているのだとわかる。

怪我をしているじぃちゃんはどっちかというとピンチな感じで今だにポカーンとこっちを見ている男をどうにかしようと、とりあえずじぃちゃんを守るために二人の間に入ろうと思い、俺は急坂を全力で登りきりパンパンとなった脚に鞭打って走った――――――――――けど無理だった。


「――ぐえぇえぁあああぁ!!!!?」

力が中々入らない足はそのままフラーと立ち上がったかと思うとフと力が抜けてしまい、しかも運の悪いことにそれなりの大きい石につまづき土ではない、岩の地面にこんにちわ!をしてしまった。固ぇえよ、痛ぇぇぇえよ!誰だよここ石の地面にした奴はぁ!!

鼻の奥がツーンとして鉄っぽい匂いと一緒に鼻からボタボタと液体が零れた。やべ、鼻血だ、と思いながらもじぃちゃんを助けようと顔を上げると未だ呆然と見続けている男が真顔で言いやがった。言ってきやがった。

「・・・・・・お前、馬鹿だろ」

その言葉に反論しなかった俺は大馬鹿者だ。

きぃぃぃああぁぁぁぁあ!ムカツク!!!



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