I


それから数ヶ月か過ぎた時の事。

伊達領となった元南部領の恐山にて、幻想的に燃える色とりどりの淡い火球が浮遊するのだそうだ。しかし近寄ると元からいなかったかのように姿を消している。されど遠くからでははっきりと見えるその存在。

追うと逃げていく、逃げ水と同じように、近くによれど決して触れない火。

誰もが怖れた中、一人の男が淡く笑みを見せてこう言った。






「恐山はなぁ、人魂の集う最終地点なんだよ。お前らも死ねば最後にはアソコに行き着く。けれども仏の世にいくには魂の列が長すぎてまだまだ掛かる。けれど最終地点にたどり着いた以上出ることもできやしない。だからああやって姿を現しては"会いたい会いたい"って彷徨ってよ。近づいた奴が会いたい奴じゃあなけりゃあ姿を消す。亡者にしても生者にしても怖ぇ所だよなぁ―――――」

そうして彼は耳を済ませてホゥホゥと笑ってみせる。

「亡者に会いたきゃあ、恐山にいきな。行って会えなきゃそいつぁ仏の世に行ったのさ。それでも会いたいってんなら俺が、呼び出してやるよ。ただし――――」

"高くつくぜ?"



男は旅人にそう言うと寂しそうに笑って「使いの途中だからな。俺に会いたいなら伊達政宗の城に取り次いでもらえよ。そうすりゃあ、多分会える」

と手をヒラヒラふって去っていった――――――



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