船が島についた。 海賊ということもあり人気のない処に停泊するのかとばかりに思っていたウミだったが、普通に港にとめていて彼等は普通に船を下りていった。良く見れば、海賊旗のついた船がこのハートの海賊団の船のほかに二隻ほど停泊していて、この世界ではこういうのは当たり前でよくあることなのだと学んだ。 「お待たせ・・・っ」 疲労が溜まっていたのか約束していた時間を過ぎてから目を覚ましたウミは慌てて倉庫を飛び出し途中で出会ったペンギンにベポとキャスケット帽子をかぶるシャチの居場所を聞くとかけて外に出た。甲板にでて下を見ると二人がのんびりと島を眺めていて声をかければ二人がすぐにふりかえった。 「ウィース」 「ウミ、早く早く!」 待っていてくれてよかった。置いていかれなくて良かった。 ウミは安堵の息を漏らしては、船から下りた。 「遅れてごめんなさい。んで、よ、よろしくお願いします。ベポ、シャチさん」 軽くお辞儀をすれば頬を緩ませてるシャチ。 「あー、シャチでいいって。シャチ」 「え、あ・・・はい、シャチさん!じゃなくてシャチ!」 「よーし、いこう!」 ベポが待ちきれないとばかりに手をあげて歩き出し、ウミとシャチもそれに続いて町の中へと進んでいった。 10.一日目の島 「えっと、あー、まず服から買いに行こうと思います」 そう告げて少し歩くと人通りのある道へとたどり着いた。ウミの世界でいう商店街ともいえるとおりには人がたくさん歩いていて、その中には見た目からして海賊のような人相の悪い人、威勢のよさを見せ付ける人もいた。よくよく見れば普通の人との区別がなんとなく雰囲気でついた。 海賊二人に挟まれて歩いているウミ自身も海賊として捉えられていたことは微塵にも気付かなかったが。 「ウミ、あったよ!」 この三人の中で一番身長の高いベポが、先にある店を見つけて指をさす。人混みを避けて歩いていくといかにも女性専用といった服屋があり、ショーウインドーにフリルのついた桃色のワンピースや、胸元にリボンのついたTシャツ、何かしらの可愛らしいあるいは綺麗な刺繍の施されたシャツが飾られていた。勿論、中にはその他たくさんの服が。 その見た目の可愛さに硬直してしまう。 「かわいいー」 「ウミ、中にはいんだろ?俺、ハズカシーからここでま」 「い、え、あたし、こっちのお店がい、いい、いいです!」 「「え?」」 人混みの向こうでチラチラと見える服屋を指差す。それを追った二人が見たのは男物の服を専門に売っている店だった。女性専用の服よりも男性専用の服がいいといったウミの肩をガシリとシャチは掴んだ。 「おま、女だろ?!」 「おお女ですけどっ、こう、可愛い系の服がに、苦手なんですっ!!」 「だからって男モンの服をかうこたぁないだろう・・・」 「ウミってボーイッシュなのすきなんだね。大人しいから女の子の服、好きかと思ってた!」 「あたし、女の子の服、似合わないし・・・男の子の服のほうが、かっこいいの揃ってるし・・・うん」 性別上は女だけども、体に自信がない。それに可愛らしい服は可愛らしい子が着るためにあるようなもの。だからウミは男子物の服が良いと思っている。それに兄弟達が皆、男だからということもあり、センスが男向きになっているというのもあった。 女性服の店から遠ざかり男性用の店へと入っていくウミ。男性用ということと、やはり海賊もいるわけで先頭をずいずい進んでいくウミの後を追うシャチとベポ。 中には男性しか客がおらず(当たり前だが)ウミはその中に混じって服を選別していく。 「―――シャチ、あの、言いにくいんだけどどのぐらいまで大丈夫ですか?」 「大丈夫?何が?」 「・・・お金、が」 まさかそんな事を聞かれると思ってなかったらしくシャチは一瞬キョトンとした表情を見せればすぐにケラケラと笑いウミの頭を優しく叩く。 「店のモン半分ほど買い占められる金貰ってるから安心しろっての!」 「店のものを半分も!?ですか!?」 「や、そこを敬語にいちいち直す意味わかんねえよ」 この世界のお金がウミの世界と共通かは知らない。いや、値札を見る限り違うだろうが、見た目的には同じぐらいだとは思う。つまり一着3000円(この世界ではベリー)するわけで、この店はそんなに小さくもなくて――――とウミは計算を始めたが途中で訳がわからなくなり止めた。 頭から煙がでてきそうである。 ともかくさっさと服を買ってしまおう。 ウミは、気に入った服を片っ端から手にとっては「荷物もつよ?」と言ってくれたベポへと渡して行った。 それからその店以外に入り、下着、生理用品、雑貨を購入し終った頃、あたりは薄暗くなっていて空は黄昏に染まっていた。 (オイ、 男モンの服ばっかじゃねェか) (キャプテン!ウミはねボーイッシュなんだよ) (・・・全部戻してこい) (い、いやです・・・) (・・・・・・・・・) [mokuji] [しおりを挟む] |