船長が興味を持った。 だから興味を持った。 ベポが女のところによく遊びに行っているのは知っていた。 ベポが懐いた女、だから気になった。 興味が、広がった。 6.興味の感染力 二日で二度めの敵襲は確かにクルーの疲労を増やした。しかし原因はそれだけではなかった。ベポが酷く落ち込んでいる。ペンギンも無口。そんな二人にキャスケット帽子を被ったシャチはやるせなくなって溜息を吐いた。 なんでこうも二人が沈んでるんだと考えて思い当たるのは二日前に突然現れた女が怪我をしたからか。 詳細は知らないが、船内に浸入されてしまい運悪くそいつは倉庫へ。そしてそこにいた女と出くわして―――、というわけだ。 間一髪で船長により助かった女は、片腕の神経をやられたらしい。最初の一回きりしか会ったことのないシャチは軽くご愁傷様と目の前の二人と彼女へと心の中で呟いた。 二回目の襲撃にあったのが昨日。船長にそのまま担がれて手術室へと消えた女。状態だけがペンギンへと伝えられそれがベポにも伝わり今の沈んだ状態となっている。 「なぁー、んなに気になるならよ、様子みてくりゃあいいじゃん?」 「・・・・・・」 「う、うん・・・そうなんだけどね」 顔、合わせづらくて。 そういうベポは世話をしたいと言い出した本人だからそうなのかもしれない。世話をするといったのだから敵襲にあった中でも最低限の女、ウミの保護をするべきだったのだ。しかしおきてしまった事は仕方ない。 「ベポー、終わったことはしょうがないだろーがよ。様子ついでに謝れば?んで、おれとしてはなんでペンギンも沈んでるのかってことなんだけど」 ベポと違って世話をしていたわけでもないし、たとえこの船の母親的存在でも二日としかたっていない女に対して情が移るわけでもない。副船長的立場のペンギンだけれども、クルーでもない存在が怪我をしたことに責任を感じているのはおかしなことだった。 「・・・・・・伝えなかった」 「ほ?」 「敵襲が来た時に、施錠があるからと安心して何も伝えなかった。もうちょっと気を使って別の安全な場所に移せばよかった」 それはつまり、罪悪感か。 しかしそれは相手がクルーだった場合の判断だ。ウミはクルーではなくて、予期せぬイレギュラー。いてもいなくても、殺されてしまってもハートの海賊団のクルーたちにはなんの影響もないのだ。むしろ戦える存在ではないために、荷が軽くなる。 だというのに、ペンギンはそんなウミを"安全な場所"に移さなかったと事に責任を感じていた。 「・・・クルーじゃないじゃんかよ」 「わかってるさ。それでも、そう思ってしまったのだから仕方ない」 「・・・」 たった数回あっただけ。 それだというのに気にしてしまった。 普通の女だからか。 それとも船長が"興味を持った"からか。 それだけでペンギンも興味をもってしまうだなんて、変なものだ。 「う〜っ・・・俺ウミのところに行ってくる!それで謝る!」 ベポが椅子から立ち上がった。そしてそのまま走って治療室へと言ってしまった。無言で残ったペンギンに視線を向けるシャチ。あんたはどうすんの?と視線に含まれていた。 「・・・俺も彼女のところに行く」 「はいはい、イッテラッシャイ」 静かに立ちあがったペンギンを見送るシャチは、一人きりになった食堂でしばらくぼーっとしていたが、急に立ち上がり同じ方向へと歩いていった。 暇なのはつまらん。 そう誰に言うわけでもなく零して。 (それに) (おれも、ちょっとだけ) (興味を持ったからね) [mokuji] [しおりを挟む] |