<社長側近Mの話>



<社長側近Mの話>


あたしは西軍株式会社『斬滅』の現社長である石田三成の右側近位についてるしがない秘書。左の位置にももうひとり側近がいてその人は主に社長の考える計画を現実で物通しできるようにするのが仕事。
三成社長は、社長としてはまだ日が浅く最近ではそのことによる仕事のストレスがたまっているようで事あるごとに茶碗を叩き割ったり握力で握り割ったり部屋に飾りとしておいてある刀でぶった切ったりとお茶目をやらかす。あたしとしては同じ種類の茶碗をわざわざ買いに行かなきゃならないので迷惑な話だけれども結局はそのストレスの原因を作り出している存在の責任なのでさっさと●ね!とか内心で中指をたててみたり。てへ。


「三成社長、お茶をどうぞ」
「そこに置いておけ」
「置く場所がありません」
「なら置くな」

なら置くなっておい。
社長の机にはたくさんの書類が山積みで、とはいっても判子を押すだけの簡単な作業でやろうと思えば小一時間もあれば片付くのだけれどもそれよりも社長は今重大な仕事で頭がいっぱいらしい。

ここの西軍株式会社は今、東側へと進出しようとしているのだが東側で社を陣取っている東軍株式会社がある。そこは『絆』という会社で名前からしてうさんくさそう(こちらの社は物騒で人のことは言えないが)な所で同業社であるのだ。そして社長の人のよさから(こちらの社長とは真逆だ)人望を広げていきどうやらこちらと考えが同じのようで西に進出しようと企んでいるらしい。
三成社長は今それを食い止めるのと進出計画をしているのだ。

「やれ、戻ったぞ三成」
「刑部!」
「お疲れ様です大谷さん!」

音もなしに社長室へと入ってきたのは左側に位置する側近の大谷吉継。三成社長のもっとも信頼する存在であたしの尊敬してやまない方だ。この人はとても部下の使い方がうまくて頭も回る。社員の長宗我部を東軍株式会社から引き抜いたのは見事だった。どうやったんですか?と訪ねた際に「企業秘密だ」とニヤニヤ笑っていたのはもうなんとも言えない最高のかっこよさ。素晴らしさ。大谷さんがいれば東軍なんてあっという間でしょうね。ええ。

「どうだ、刑部」
「今のところ問題はない。だが、あの者は性格が優柔不断で柔く莫迦ゆえに監視をしておいたほうがいいだろう」
「なら佐助をひっつかせるのはいかがでしょう」
「そうよの、それが良い。頼めるか?」
「はい」

携帯を取り出してショートボタンで佐助の携帯番号へとかける。三コールあたりでやっと出てきた佐助は実に眠たそうで気だるそうにしていた。

「なんでしょー・・・」
「遅い」
「おそ、って俺様休みなんすけど・・?!」
「お黙り。んで、佐助にお願いがあるんだけれども小早川秀秋をマークしておいてね」
「えー・・・もちろん俺様の休日給金は、」
「成果しだいで考えてあげるけど基本は無しね」
「・・・ですよねー」
「じゃ、よろしくねー」

佐助の事だから嫌だ嫌だいいながらも働くにきまってる。社畜っていうのは佐助のためにあるようなものだと思う。小早川秀秋は性格はまるでダメな男だけれども日本指おりに入る大豪邸の息子だ。こちらの前社長の秀吉サマや向こうの会社の社長とも知り合いだ。向こうの情報を引き出すにももってこいの存在。是非とも引き入れたい。

ただ、傍らにいる警備員が不穏な空気を醸し出してはいるけれども・・・。
ここは小太郎くんにどうにかしてもらおう。うん。

「それはそうと三成。作業はすすんでおるか?」
「ああ。バッチシだ。かれこれ1000通ぐらいは送ってやったぞ」
「ヒャヒャヒャ、いいぞ三成。そのまま送り続けてあやつのPCをダウンしてやるがいいわ!」
「ふん、任せておけ!」


「・・・。」





あれ?
てっきり仕事してるかと思ったのにまさかの迷惑メール送信でしたの社長?

東軍株式会社は人望があついからこそ立派に建っていられると噂で聞いたたけれども、こちらの会社はどうやら恨みで建ってるみたい。三成社長と向こうの徳川社長。どんな因縁があるのかは本人があまり話したがらないのでなんともいえないけれども―――――・・・。

「あ、社長、大谷さん。お茶、入れてきますね」

「あァ」
「ああ」

ざまあみろとほくそ微笑む二人を、横目でみながらさめたお茶を手に持つ。

とりあえず、給水室へお茶を入れに行こう。
ああ、そういえば茶菓子をもらったんだ。いくつか摘んであまりを社長達にだそうっと。

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