ろく




「コアルヒー・・・っ」

コアルヒーは、ポケモンフードを食べていた。しかも美味しそうに。

その表情を見てつかさは絶望に似た何かがずっしりと背にのっかるのを感じた。

唯一心を許していたコアルヒーが、他人に、しかも盗んだ相手からの餌をあのような表情で食べている――――


「コア、ルヒー?」

――――今回の失敗でつかさはもうプラズマ団には戻れない。

戻ったとして待っているのは酷な仕打ちだというのはわかっていた。だから戻らないで、許可を、おとうさまに許可を貰うまで許してくれるまでもう一度、機会を与えてくれるまで、どこかで待っていようと考えていた。

きっとこないだろうけれども、それでもコアルヒーと一緒なら、と考えていた。幼い頃から一緒にいたコアルヒーならずっと一緒にいてくれるだろうと、同じ思い、気持ちを感じていてくれているだろうと。


結局はそれはただ、つかさがそう"思いたかった"だけだったのだ。


つかさの気配を感じたのかコアルヒーが顔を上げた。くあ、と鳴いて近寄ってくる。近寄ってくるから、つかさは一歩下がった。コアルヒーが歩みを止める。どうしたの?と言いたげに首をかしげてつかさからの言葉を待っていた。


「―――・・・裏切り者。裏切り者、裏切り者裏切り者!結局は、あなたも・・・」



血の気が昇っていたが、今度は一気に冷えていった。

そうだ、小さい頃から一緒だったとしてもおとうさまから"与えられただけ"の存在。

私の事などわかるはずがないのだ。暗い中にいる間、この子は普通に過ごしていたんだ。私が見当たらないなって"ちょっと"思う程度で普通に過ごしていたんだ。わかるはずがない。




私の心が、想いが、わかるはずないんだ。


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