さんじゅうはち





――――やけに心は落ち着いていた。

もっと揺らいでるかと思った。

プラズマ団員なのに、プラズマ団と敵対して"裏切りの行為"をして、あの女プラズマ団員・・・オルカがおとうさまに報告すると言っていた。この先どうなるのかわからない。けれども確実に"野放し"はされない。

きっといつか、私をどうにかするためにやってくる。


手元で転がしていたヒールボールを掴む。無意識に力んで掴んでしまった事に溜息を吐いて心中で今にも爆発してしまいそうな"恐怖"を押さえ込む。誰かに縋りたい、助けて欲しい。その恐怖の苦しみでそう思ってしまう自身が愚かで汚くてどうしようもない。

それでもポッドとその言葉が浮かんでしまい、人に甘えるのが上手になったな、と口端を吊り上げ下唇をかんだ。一人のときだったらこんな事、なかったのに。


いつまでも部屋にこもっていたい。そう思うけれどもこの屋根の下に住むのは私一人ではない。しかもウェイトレス(ウェイター?)として動いてるからして昼時までこもっている、つまりサボりである私の元へと三つ子の一人が痺れを切らしてやってきた。


ここの部屋に鍵はないから扉は障害にはならなくて、難なく怒りの言葉と共に開いた。


「いい加減におきなさいっ―――・・・何をしてるんですか」


「・・・・・・・・・考え事」

あながち間違ってない理由に深い溜息を吐き出したコーン。目を隠す長い右前髪が揺れる。手元のヒールボールを弾いて隅っこへと転がす。怒ったコーンの目が見れなくて視線は隅っこで寂しそうにしているボールだけを見続ける。


「そろそろ人手が足りなくなる時間です。"くだらない"考え事なのでしたらすぐに着替えて店に出てください」

私のこの考え事はくだらないのだろうか。いや、すでに終わったことを考えているわけだから"くだらない"ことに決まっている。いつまでもこうやって先のわからないことを考えても結局は何もわからないし時間の無駄。

私はやっと重い腰をあげた。

「・・・着替えるから」

そう一言告げると頷いてくれて扉を閉めてくれた。「よろしくお願いします」と扉の向こうから聞こえて足音が遠ざかっていく。それを確かめてからコーンに負けないぐらいの重い溜息をはいて壁に掛かっている制服へ手を伸ばした。



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