さんじゅうろく

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夢の跡地。

マコモさんの頼まれごとでムンナの"ゆめのけむり"をとりにきたトウヤ。

トウヤ自身もここに用があってそのムンナを手持ちにどうしても加えたかった。いや、ムシャーナでもいい。



もう忘れかけてしまっている古い記憶を呼び出してくれるのなら。


もうどんな顔だったかどんな声だったかどんな生活を送っていたのか、わからない。それでも微かに残る記憶が"会いたい"とトウヤを刺激してくる。

草むらに入るとミネズミが音に気付き逃げていく。チョロネコが今や廃墟となった建物の瓦礫の上を器用に歩いている。その気品のある瞳が少しばかりの興味を含んでトウヤを見下ろしている。

それらの野生らしい態度にトウヤはくすりと笑い腰に付けているモンスターボールを手に取った。二番道路でつかまえたポケモンだ。とはいっても本来ならば二番道路に生息しているはずのないポケモンでしかも生息地も定かではない、アララギ博士から貰ったポカブーよりも希少な存在だ。

それに他の生物に化けられるということもありみた瞬間に欲しいと思ってしまった。まるで、運命の出会い、とか言ってみる。


「ゾロア」

モンスターボールから出てきた小型のやや淡い黒毛のポケモン。何処か強気な瞳がトウヤを見上げた。つかまえたこのゾロアはとても無口だ。捕まえたばっかりで信用されていないだけなのかもしれないが、返事を返してくれたことは一度もない。

まあ、これから仲良くなっていけば良い話だ。

「君は音に敏感だから、草むらに隠れているムンナかムシャーナを探して欲しいんだ」

「・・・」

否定も肯定もなし。

ただ強気な瞳がこちらに向けられるだけで何を考えているのか思っているのかトウヤはわからない。それでも見つめあいの最後にはかならず言うことを聞いてくれる。なんとも気難しいポケモンだ。

ゾロアよりも高い草むらへともぐっていき、草を揺らす音だけがしばらく聞こえてくる。見飽きた野生のチョロネコが「にゃー」と鳴いて笑うように去っていった。


しばらく様子を見ているとある部分の草が激しく揺れて藤色の煙がもわもわとあがってきた。

日に当たりきらきらこ光る。マコモさんに少量のゆめのけむりが入れられた小瓶をみせてもらった。まさにそれと同じ色と輝きでそれだ!と足をすすめるとムンナが二匹いた。


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