さんじゅうさん




「――まあ、いいわ。アンタ一人いなくなったって組織に支障はでないし・・・むしろ、いなくなって清々するわ。あぁ、きちんとこの事は"ゲーチス様にご報告"しておくから」


おとうさまの名前に反応してビクリと震える。

希望を捨てる恐怖に身を震わせながらもそれを気付かれないように虚勢をはり、女性プラズマ団員をにらみつけた。

「怖い怖い」

ケラケラと笑う女性プラズマ団員。男性プラズマ団員から女の子から奪ったボールを奪いこちらへと投げてきた。

勿論、せっかく奪ったポケモンを返す仕草をした女性団員へと「何をするんだ!」と怒りの矛を向けていたが、睨まれた途端おとなしくなりそっぽを向いた。

奪ったポケモンを返した、という事にこちらも反応が返せず暫く馬鹿みたいに口を開けて立ち尽くしていた。


「こんな弱いポケモンよりもいい"情報"が手に入ったから要らないわ返してあげる」


それだけ言うと懐から白い玉を取り出し地面へとたたきつけ、途端に白い煙がその場で広がり充満していってしまう。

「――――ゲホッ!」
「っけほけほ!!」

突然の事に鼻孔から口から煙を吸い込んでしまうと喉に焼ける痛みを感じて互いに口を押さえ涙を目元にためながら咳を吐く。

しばらくすると煙は薄まり姿を認識できるまでになったが、プラズマ団員の姿はなく、喉の痛みと苦い気持ち、そして女の子のモンスターボールだけがその場にポツンと残ってしまった。

地面に転がるモンスターボールを手にとり、背後のつかさへと身を向ける。つかさはすでに背中を見せて外へと歩み出ようとしていた。

自分はつかさにとっての大事な何かを奪ってしまったのではないか。それだけがポッドの中でぐるぐると回り続けやっと搾り出した声は彼女の名のみ。

「――――つかさ」

その言葉に足をとめたつかさだったが「女の子がまってるよ」と静かに告げて日の当たる外へと出て行ってしまう。

日に当たるつかさの背中だが、そこだけ暗い影が映っているように見えたポッドは「ごめん」と彼女には聞こえない呟きを一つ零して彼女の後を追っていく。



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