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「はい」
 サンタさんは こたえました。
「こんにちは。まいちゃん」
「こんにちは。どうして まいには サンタさんが見えて、おねえちゃんには 見えなかったの?」
「ぼくは サンタクロースをしんじている人にしか 見えないし、さわれないんです」
「ほんとうに?」
 まいちゃんは サンタさんの赤いふくを さわってみました。
 ぬのでできたふくは やわらかくて、たたくと ぽすぽす、おとがしました。
 あまりにもおもしろくて、こんどは サンタさんのおひげを さわってみますが――
「あっ」
 つかんだおひげは、かんたんにとれてしまいました。
 中から見えたのは つるつるのはだ。
 赤いさんかくぼうしもおちて、くろいかみが あらわれます。
 まいちゃんは 目をまるくしました。
「あーあ。ばれちゃった」
 くろいかみのサンタさんは かおをくしゃくしゃにすると、じぶんのかみを 手でとかして ととのえました。
 そのばにしゃがみこんで、まいちゃんと 目をあわせます。
「ぼくがだれなのか わかる?」
 サンタさんのしつもんに、まいちゃんは こくりとうなずきました。
 おひげのとれた サンタさんのかおを、まいちゃんは しゃしんで見ています。
 ほんものを見たのも、おはなしをするのも これがはじめてでした。
「まいの『お父さん』だって。お母さんから きいている」
 まいちゃんには お父さんとのおもい出が ありません。
 まいちゃんが生まれた日に、じこで しんでしまったからです。
 でも お父さんのことは お母さんから たくさんきいていました。
 まいちゃんのお父さんは せがたかくて とてもやさしい人だと ききました。
 わらったかおは お日さまみたいで、むねがぽかぽか あったかくなるのだと ききました。
『いま お父さんは 空からとおくはなれた おほしさまにいるの。
 だから お父さんには あえないの』
 そう お母さんから きいていたのに――
「まいにあいにきたの? とおいおほしさまから、あいにきてくれたの?」
 まいちゃんのしつもんに、お父さんは にっこりとわらいました。
「お父さんはね、おほしさまには いかなかったんだ。かみさまにおねがいして、サンタクロースのでしに してもらったんだよ」
「でし?」
「ほんものの サンタさんのそばで たくさん べんきょうするんだ。せかいじゅうの いろいろなくにを学んだり、そりを うんてんしたり、すこしだけど まほうも ならったんだよ」
 お父さんのはなしを しんけんにきいていた まいちゃんは お母さんがいっていたことを おもいだします。
 お父さんは 子どものころ 『大きくなったら サンタさんになりたい』と いっていたこと。
 少しでもサンタさんにちかづけるよう、おもちゃやさんで はたらいていたこと。
 そのことをはなすと、お父さんは うれしそうなかおをしました。
「そう。お父さんは サンタクロースに なりたかったんだ。だから たくさんべんきょうして やっと おゆるしをもらえたんだ。ほんもののサンタクロースに なったんだよ」
「すごおい」
 まいちゃんは りょう手を ぱちん、と あわせました。
「じゃあ、おもちゃをいっぱい持っているの? まほうは? おそらをとべるの?」
 なんでもできるお父さんに まいちゃんは はしゃいでいます。 
 そんなまいちゃんに お父さんは ちょっとだけこまったかおをしました。
「ごめんね。 まほうは むやみにつかうことが できないんだ。それと サンタクロースがお父さんだってことは だれにもいっちゃいけないんだよ」
「どうして?」
「おとなの人に気づかれちゃうと、お父さんは おほしさまに かえらなくちゃいけないんだ。それが かみさまとのやくそく。だから、このことは だれにもしゃべっちゃだめだよ」
 まいちゃんは こくりとうなずきました。
 ほんとうは だれかにしゃべりたくて、口がむずむずとしているのだけど、お父さんがとおいおほしさまに いってしまうのは いやです。
 それなら サンタさんになって ここにいてくれたほうが ずっとましです。



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