ONE PIECE [LC] | ナノ



セトたちが新しく買った服を着てやって来た。
今までズタボロ、小汚ねェカンジでどうしようもない連中だったが服一つで何とでもなることが分かった。双子は子供らしく可愛らしくなってクルーたちは随分と大喜びしてたよい。何だかんだでオヤジの孫だしマスコット的存在だしなァ。けど、あいつは...違った。

「......何でまたおめェ...そういう系に走ったんだい?」
「何が」
「何がって――...(どんだけ拘束ベルト付けてるんだよい!)」

まずジャケットとスボンに意味もなく付いてるベルト・ファスナー・チェーン!用途が不明すぎだろい!
で、明らかに身長低いのを気にした厚底のブーツ!しかも派手な装飾がカチャカチャうっせえェんだよい!
そのくせ、何の変哲もねェ無地のシャツ!何でシャツだけ地味に装飾ねェんだよい!ここだけ経費削減かよい!

......と、突っ込みどころ満載。これはもはや海賊じゃねェ、どこぞのデケェ街に居るチャラけた兄ちゃんとしか言いようがねェ。

「何か変か?」
「いや...アレだ。海賊らしからねェよい」
「露出狂だと海賊らしいのかよ」

.........まァ、色々だよい。
セトの視線の先には半裸で昼寝をするエースが居て、今日はおれも暑いからジャケットを着てねェ。さっきイゾウがチラっと見えたがあいつも着流しを崩して歩いてた。要は海賊らしい服装なんてないってことだ。決して露出すりゃ海賊に見えるってわけじゃねェよいセト。

「大体...その羽根は邪魔じゃねェかい?」

とりあえずその辺の話題を少し逸らすため、ふとセトの胸元に揺れるものを指摘する。
今までボロボロで地味だった分、ちょっとしたものがよく目立つ。服もかなり目立つことには変わりねェが、胸元に飾られたアクセサリーも目を引く。何せシャツが無地無装飾だからねい。しかも羽根のカタチのネックレスなんだが...片翼ってのがまた珍しい。

「見せてなかっただけで今までずっと付けてた。邪魔じゃねえ」
「......そうかい」
「つーかエース見ろよ。俺より派手なもん付けてる」

.........まァ、否めねェよい。
服装に規制はねェからなァ...よく見りゃエースはドクロドクロしたもんが好きで付けてるし、イゾウも着流しハルタもよく分かんねェ服着てる。その辺を考えたら...セトは普通かもしれねェよい。前より格段にマシだし見苦しくもねェしなァ。

「あ、言っとくが俺は露出狂じゃねえから絶対ジャケットは脱がねえから」
「......落ち着けよい。おれらは露出狂じゃねェよい」
「だったら趣味か?どのみちソレを露出狂癖って言うんじゃね?」
「"誇り"を主張してるだけだよい!!」

露出狂、露出狂ってどんだけ勘違いしてんだい!むしろ露出して何が悪い!
随分と肌を出すことに抵抗を示すセトは見ていて暑苦しいもんはあるが見苦しいもんはない。ナースが胸とか脚を出す分には構わねェがおれらくらいのオッサンが揃いも揃って脱ぎ出した日には見苦しいを通り越して別世界まで意識を飛ばしそうになる。それからすりゃ逆に脱がねェと言われた方がまだマシかもしれねェよい。

「"誇り"か...俺も近いうちに入れることになるよな」
「まァな。だが今んとこは無理だな。ウチの彫り師の居る島は遠いから」
「そうか...ならまだ時間あるな」
「ん?痛いのが怖いのかい?」

ある意味、怖いもの知らずのセトに限って体が傷つくのが怖いとかねェだろい。そう思いながら嫌味を投げ掛ければ、少し考えて「いや、」と答えが返って来て、「怖いとかはねえけ――...」と続けた時に、

「セト!!」

エースが起きた。寝起きから随分と興奮してやがるよい。

「おめェどんだけイカス服買ったんだよ!マジか!」
「......耳痛いぞエース」
「でもぜんっぜん可愛くねェ!やっぱ子供服――...」
「買わねえよ。殴るぞバカ」

......あァ、確かにバカだからもう殴っちまえばいいよい。
むさ苦しい野郎ばっかの船の中、確かにこいつは中性的で鑑賞だけなら可愛いもんだと思う...思うがな、にしちゃ言動は全然可愛くねェよい。というよりも小さいだけで一端に男背負ってるんだから子供服薦めんのはやめとけよい。

「おれ的にはセトにもっとこう...可愛い服を着て欲しかったぞ!」
「......具体的にはどんなだい?」
「イゾウみたいなの。胸元が肌蹴たら色っぽい」
「心底キモイよい!!」

病気か!そう聞けば否定の言葉が返って来て、セトが無表情で蹴りかました。殴るって言ってたのに。
何かこう...変なのに好かれて少しだけ不憫に思えるよい。あの日、エースじゃなく別のやつに見つけられたなら...二番隊にも入ってねェし、ここまでベタベタされなかったかもしれねェ。が、後の祭りだ。手遅れにも程がある。

.........というよりもエースが必要以上に構いすぎる傾向にあるのがおかしいんだがねい。

「お、セト。イメチェンしてるな」

そう、サッチだよい。
始まりはサッチが始めた例の会議で「可愛い」を連呼した事件。アレでエースの脳内ネジがぽーんと外れた気がする。
いや、元より面倒見が悪いわけじゃねェ。ただ、今まで下に付いたやつはそこそこくらいで必要以上に構うようになったのはセトたちが初めてだ。まァ年も近ェし、兄弟を思い出して可愛がってるんだろう...と思いたい。

「サッチ」
「なかなかイイじゃねェか。特にこのアク――...」
「触んな」

例の片翼ペンダントに触れようとしたサッチの手をセトがいきなりシバいたよい。

「ったァ...コレ、ペアだろ?片割れは誰に――...」
「はァ?おれまだ貰ってねェぞ!?」
「貰える気マンマンかい!」

と、いうよりペアものだったのかい。だから片翼なわけねい。
よっぽど大事なもんなのかエースやサッチがちょっと触れようとしてもすぐに払い除けるセト。それがまた二人の闘争心に火を点けることに気付いてないらしい。最終的には服の中に仕舞っちまったけど。

「で、片割れは失くしちまったのかい?」
「.........いや、」
「あるならおれに寄こせ!」
「手元にはもうねえよ。随分前に――...」

人にやった、わけかい。にしちゃ...何かマズいこと聞いたカンジがするよい。
口を閉ざし影を落とすセトにいくら何でもサッチもエースも気付いたらしい。とはいえ、エースがショックを受けてるのが何とも言えない。

「あー...それより話を戻すよい」
「........."誇り"の話だったな」
「ああ。怖くはねェけど...で邪魔されたんだがねい」

無理やりだったが話題転換。ここでまたサッチとエースが「何の話だ?」とキョロキョロし始めたから説明して。

「まあ...怖くはねえけどアレだ。何処にするか考えようかと思って」
「え?ソレ悩むとこか?」
「よーし、おれみたいに背中にドーンとやれ!」

と、話題転換に成功したところで少しホッとする。
何かなァ、どうも色々引っ掛かるんだよい。徹底した秘密主義なのは分かるんだが、時々出て来る"昔"があまりにも...あいつを暗くしてしまう。それゆえに触れられない。おれらもあいつも避けちまう。それがいいことなのか悪いことなのか。

少なくとも"誇り"を刻む覚悟はある。もう少し...待つべきなんだろうよい。

「そうだな。エースの言う通り、背中でよくねェかい?」

11.5. 誇り
12. 夏島ギャルげっちゅー

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