ONE PIECE [LC] | ナノ


目立つ人物に注意

船を出て約3時間。最初の店で買ったものは一度置きに戻らねえと手ぇ千切れちまうぞ!くらいの量になってて...道中死ぬかと思った。

「お、すげェ買ってんじゃん」
「.........いいから、助けろ」
「やるなァ。そんなにナースが怖かったのかい?」
「んなこといいから助けろって!」

気の利いた店員によってまとめられた二つの荷物は軽くシンやエアの二倍以上の大きさ。リュックになってはいるものの...原型留めてねえその姿はまるで樽に近い。止め金具はもう数分もすればパァンと弾けちまうだろう。それくらいの勢いだ。
完全に束買いも束買い。衝動買いよりもタチの悪い買い物をした俺らに、店員はとても嬉しそうで値切ってもねえのに安くしてくれた。リュックもオマケ。感謝はするが...この状況下において「手伝いましょうか?」とは言ってくれなかった。まあ...そんなもんだろうけど。

「あー......今まで生きてこんなに金使ったことねえぞ」
「そうかい。あ、一応追加予算としてオヤジからあと1000万ベリー預かってるよい」
「どんだけ予算!?まだ半分も使っちゃねえよ!!」

むしろ一割も使ってねえ!と言うと「良かったな、良心的な店で」とサッチに肩を叩かれた。

「で、この荷物の中身は?」
「シンとエアの服一式」
「おめェのは?」
「.........この状況で俺のまで買う余裕はねえよな?」

これで自分のまで買って抱えて来たなら勇者もしくは英雄として称えられても可笑しくねえぞ。
疲れ切った俺の傍で「よーふく、よーふく」と喜ぶ二人にまだ靴とオモチャと買ってない。また少し休憩したら出掛けなきゃいけない、いやもう明日にするか?くらいの勢いでいれば...背後から妙なオーラを感じた。

「セトちゃーん」
「ゲッ!!!」
「船長が"セトの手伝いして来ていいぞ"って言ってくれたからディアナと準備して来ちゃった」

ナース服から私服へ着替えた姐さんが二人。
"セトちゃんが可愛い服着てなかったら一緒に買い物行こーっと"じゃなかったのかよマルコ!!と、ギッとマルコを睨めば素知らぬ顔して船内に逃げ込みやがった。

「じゃんけんしたのよ。で、勝ったミネがセトちゃんと、私が双子ちゃんと買い物に行くことになりましたー」
「嫌だあああああ!」
「もう、どキッパリ言うわね。別に嫌がらせなんかしないわよ」

ふふふ、と笑う姐さんたちにゾワゾワする。本当に、本気で、俺は嫌なんだ。

「嫌がらせうんぬんじゃなく姐さんたちとは行きたくないんだ!」
「あらあら、こんなとこでお子様スキル出しちゃう?」
「出す!絶対嫌だ!まだエースとかサッチとかと行った方がマシだ!!」

と言えば横でサッチが「マジか」と呟いたから大きく頷く。
この人たちは完全に遊ぶ気満々でイジる気満々で挑んでるのは目に見えて分かってること。そういうのだけは勘弁なんだ俺は。

「なら俺と行くかァ?サッチじゃオッサンすぎるだろ」
「「「エース!?」」」

え?助けてくれんのかエース。

「セト、マジ嫌そうだし、荷物持ちも居るだろうし、俺仕事したくねェし」
「.........後半が本音だろうが背に腹は代えられん」
「よっしゃあ!じゃ、ミネルバとディアナは二人をよろしく!セト行こうぜ!!」

エースのヤツ、ガッと俺の腕を掴んだかと思えばそのまま猛ダッシュで階段へと向かう。有無言わず、反論される前に走る。これじゃ言い逃げだ。そんなに水の調達が嫌だったのか......とか思うが、正直、指示は出してもコイツは動いてなさそうだ。

とりあえず、エースのお陰で姐さんたちの攻撃防げたのには感謝した。



二度目となるヴィーザルの街は最初よりも人が目立つようになった。店への客足、商売人の声が増えたと思う。
貿易船がやって来たのか、それとも別の海賊がやって来たのか、どちらにしても人が増えた。少なくとも目を光らせた人も多くて警戒心が半端ない。格段に居心地が悪くなった街を俺らは歩いてるわけだが......ほんの数分前に感謝したのを忘れたい。

「服屋って言ってもありすぎだろ」
「......まあ、な」
「てか、おめェもおれみたくラフになれよ。服代浮くぜ?」
「......っと、お前は単なる露出狂だろ。俺は違うんだ」
「おれは露出狂じゃねェぞ。服とかウゼェだけだ」
「危ねっ......それを露出狂って言うんだ」

散策途中の何気ない会話の間、まるで貧血を起こしたかのようにバッタバタ倒れる男たちの姿。
一度は感謝した。姐さんたちよりもエースやサッチの方がマシだと言ったのは俺で、エースのお陰で色々回避出来たとも思った。そこは認めるんだが...

「こっちに"火拳"が居るぞ!」
「待て!ここで仕掛けると"護衛隊"が動くぞ!もう少し待て!」

注目浴び過ぎだエース。
海賊として名を挙げたい連中はどうやら山ほど居るらしい。エースが"白ひげの一味"と知ってて命知らずな。
国民に被害がなければ小競り合いを許可する街なだけに仕掛けられる数は少なくない。さっきから人が居なくなった瞬間に奇襲、奇襲、奇襲―...と同じことが繰り返されてはいともあっさりエースが片付ける。バッタバタ倒れる男たちはそれだ。

「お、この店よくねェか?」
「......そうだな。とりあえず入れば奇襲は避けられそうだしな」
「奇襲?こんなのただのお遊びだろ」
「黙れエース」

ビシバシ感じる殺気も店内に入りゃ消えるだろう。ついでに裏口からこっそり出してもらえたら...後は撒いて逃げれると思う。
今はエースだけ狙われているが下手したら付き添いも危ない。別に刃物も銃も怖かないが、この街の"護衛隊"が出て来て面倒なことになるのは勘弁なんだ。俺としては"白ひげの一味"にはなっても"お尋ね者"にはなりたくない。
伊達に長いこと賞金稼ぎはしてねえ。賞金首になれば確実にそういうのが付き纏って来ることを知ってる。単なる小遣い稼ぎから生業にするもの、暇潰し目的の小物から大物まで......出来れば大人しくしときたいんだ。
そんな思いを余所にエースはあっけらかんとした様子で店へと入って俺も追うように中へ入った。



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