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- 派生SS

おれの机の引き出しの奥、ベレッタが付けていた新緑のピアスは出番も無く眠っていた。
ある日突然、彼女自身が耳朶に穴を開けて付け始めたピアスだったが当時は察して気にならなかった。誰だってそういうのをしたがるわけで、誰だってそういう装飾品を身に纏っている。だから全く気にならなかった。

それが気に食わなくなったのは...別に趣味が悪いとかそういうのではなくアイツの所為。
目立った装飾品を身に付けていなかったベレッタが唯一していたのがソレで、まるでアイツに見せるために付けているようで...イラッとした。

「......いいのかい?」
「いいわよ」

特別な思い入れは無いらしい新緑のピアス。
たまたま店にあって安い割には良いもので何となく買って何となく付けていた物だとベレッタは言った。

「......」
「急に惜しまないでよ。捨てちゃっても平気だって」

彼女の耳には今、海色のピアスが光る。
このあいだおれがやったピアス。割と高い値で売られていたが...惹かれて買った。きっとベレッタに似合うと思って、衝動的に買った。

「......やっぱ止めとくよい」
「......」
「捨てちまっても意味はねェ」

同じだ。同じようにベレッタが衝動的に買ったピアスに罪は無い。
おれが勝手にトラウマになっているだけで...このピアスには何も、罪は無いんだ。だから捨てても意味は無い。意味が無い。

「でも、持ってても意味は無い」

おれの掌の中に転がっていたピアスを掴み上げたベレッタが、静かにその場に転がすかのように海へ...ポチャンという音を立ててピアスは自分の重みで沈んでいった。
何気ない動作で一瞬流しそうになったが、捨てようと思っていたが思い留まったピアスが捨てられた事に気付いて慌ててベレッタの顔を見た。

「何?」
「お前...」
「え?もう別にいいでしょ」

彼女はいつも通りの顔で何事も無かったかのように告げた。

「私は月に帰ったりしない。此処に居る」

月蝕を懇願する目
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