EVENT | ナノ

Happy birthday to you.

白ひげ海賊団の宴は最低でも週に一度は行われる。
あくまで最低週一であって、何かあればすぐに宴が開催されるのでほぼ毎日と言っても過言ではない。
おとといはサルベージに成功、そこそこ金目な物を手に入れた→宴。昨日は海軍と一戦交え、完全勝利→宴。と、こんな調子で宴は行われるんだ。

で、本日は...最低週一の誕生日を祝う日だった。
船員約1600名は伊達じゃなく、毎日誰かの誕生日がやって来る。勿論、自己申告制であるから一年に数回誕生日を迎える者もいる。迎えぬ者もいる。

「この一週間に、おれの家族として産まれたヤツは誰だァ?」

と、お父様が聞けば誰かが手を挙げる。そして、私も小さく手を挙げて...すぐに降ろした。

「お前誕生日だったのか!!?」
「ひっ!」
「何で教えてくれなかったんだよ!」
「え、エース隊長...」
「いつだったんだ?昨日か?」

そ、それより落ち着いて下さいエース隊長。口の中に頬張りすぎてポロポロこぼれてます!

「いや、あの、」
「いつだったんだよ!」
「きょ、今日です...」

すみませんと謝れば、何で教えなかったのかと怒られた。
そうは言いましても、わざわざ「今日が私の誕生日なんです!」なんて言えるはずがない。それじゃまるでプレゼント下さい!と言っているようなものだ。それに...エース隊長も聞いてこなかったし別にいいかなーと思っただけなんですけど、やっぱり、言うべき、だったのかな。

「マジかよ...予め教えとくのがルールだろ」
「ルール、ですか?」
「そうだ!恋人としてのルールだ!」
「......す、すみません」

というより知らなかったです。恋人としてのルールだったとは。
どおりで皆さんよく知ってるなーとか思っていました。あの子の誕生日だからうんぬん、とかよく聞く度に思っていましたが、それがまさかルールによって知り得た情報だったとは。

「ちなみに!おれの誕生日は、」
「あ、隊長の誕生日は知ってますよ」
「.........何でだよ」

何でも何も、有名ですけど。

「おれだけが知らなかったのかよ...」
「あ、いや、隊長の誕生日を知らない人の方がいない、かと、」

あれだけ盛大に祝ってるんだもの、私みたいなのにもしっかり伝わりますよ。
隊長にはその違いというものが見えないらしい。いや、宴の規模は同じくらいですよお祭りみたいですもの。だけど、そのお祝い相手が誰なのかで人の動きがどんなに違うかを知らないらしい。隊長クラスになるとお祝いの言葉、プレゼントを携えて来る人が多いでしょう?それに引き替え私みたいなのには気付く人の方が少ない。それが普通で、それが当たり前なのだ。

......と話すけど、うん、エース隊長は首を傾げたままだ。

「相変わらず言ってることが難しいぞ」
「うーん...そうですか?」
「けど、お前がおれの誕生日を知ってたのは嬉しい」

と、エース隊長は弾けるような笑顔を見せた。

「けどなァ、お前が誕生日を教えなかったことにはムカついてる」
「え!?いや、そこは逆に今知れたことを喜んではくれませんか?」
「.........」
「え、何そのジト目!わ、私は、恋人としてのルールを初めて知れた事を喜びますから!」




Happy birthday to you.




頑張って論を練って、頑張って説得する私にとうとうエース隊長は吹き出して笑う。
だけど、プレゼントを用意出来なかった事を悔やんでいるみたいで...そういう物ではなく沢山のカタチないものを隊長から沢山貰っていると話すけど納得してくれない。逆に何故、それにこだわるのか私には理解出来ない。カタチあるものほど...怖いものはないのに。

それをどうやって伝えよう。どうやったら伝わるだろう。
精一杯考えて、叫ぶように出た言葉。

「エース隊長が傍に居てくれる、それだけでいいんです!」

あまりにも大きすぎて皆が振り返って...死にたくなった。
庇うようにエース隊長に抱き締められて言われた「誕生日おめでとう。ずっと傍に居る」が、何よりも嬉しいプレゼントになった。

擬似パラドックス
(5/5)
[ 戻る付箋 ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -