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紙の上の恋愛



君が笑ってくれるなら僕はそれでいい。
僕は僕以上に君を想っているのだから――…



「……ほうほう」
「ぎゃあ!」
「詩人目指してんの?」
「ち、違うわよ」

頬杖付いて物思いにふける女子生徒は此処の常連組だ。
静かな空間で時折カリカリ何かを書いたかと思えばピタリとそれは止まる。
集中してるのか自分の立てている音に気付かない日もあって…
ソレを注意するのが俺の任務の一つだから近づいてみればコレだ。

「じゃあ小説家?」
「……」
「無言は無意識の肯定。なるほどね」

誰にも邪魔されることなく集中出来る場所は図書室くらい。
だから彼女は此処を選んで来るのは分かっていた。
けど、こういう文章を書いていたとは…知らなかった。

「……笑わないの?」
「何で?」
「小説なんて所詮妄想の産物に等しいのよ」
「いいんじゃね?」

もう長いこと、彼女を見て来たのに。

「自分のやりたいことだろ?」
「……」
「笑う権利はないさ」

でも俺は新たな彼女を知った。それが全て。
だから笑わないし、邪魔もしない。


君が笑ってくれるなら僕はそれでいい。
僕は僕以上に君を想っているのだから――…



「変な人」と困ったような顔をした彼女。
出来るなら、その紙の中にでも「俺」が刻まれればそれでいい。

20110308

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