帰り道
「おーててつないでみなかえろー」
「……随分機嫌がいいな」
「からすといーっしょにかえりましょー」
無視かよオイ。
何があって機嫌がいいのかは分からないが、随分とテイションが高い。手をブンブン振って歩いてくれて…お陰でいつもより歩調が速い。
「何かあったのか?」
そう尋ねてみれば彼女は首を横に振った。
ただ嬉しそうに笑ってまた「夕焼け小焼け」の2番を歌い出しそうになったもんだからそこは敢えて止めた。「もういいもういい」と。止めるだろ、結構デカい声だから人が振り返るし。
「歌くらい歌わせてよ」
「もう十分だ。結構見られてたぞ」
「気付いてたよ。ナイス歌唱力だもんね」
いや違う。それは違うと思うぞ。
と、俺自身は思っちゃいるが彼女には言えず、代わりに小さな溜め息を一つ吐いとく。それに気付かない彼女はにこにこして俺の手を引き、前へ前へと進んでいく。
「よし!今日は気分がいいからカラオケ行こうか」
「……ああ、そうだな」
飽きるくらい歌わせとけば帰りには童謡なんか歌わないだろう。上機嫌な彼女に先導されながら俺は、そんなことを考えていた。
20100501
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