#3.52
正直、嬉しかったんだ。
「そんなに彼女欲しいなら...アイツ、フリーだけど?」
「絶対いらね!!」
宍戸っちと岳ちゃんとの間で突然浮上した話題。
やっぱ学生時代は青春を謳歌したいわけで岳ちゃんは彼女が欲しいと言い出した。口を開けばいつもコレだ。おれはモテそうだから一人くらい紹介して欲しいとか何とか言い出すことさえある。宍戸っちもフリーらしいがまァ欲しくないわけじゃないらしい。
で、あの子もまた彼氏はいない、と。
「.........エースさんは彼女とかいます?」
「いいや」
今はいない、としておこう。
「この人はモテるからとっかえひっかえなんだぜ」
.........間違ってはない。けど後で説教する。
「はは。岳ちゃんは嘘吐きだから信用しないで」
「.........」
「いや、マジで。本気で彼女いないって」
エースってほんっと何考えてるのか分かんない!!ってビンタもらったばっかだ。多分、ルフィが見てたはず。
何考えるも何も四六時中彼女のことばっか考えるわけがなくて、腹減りゃア飯のこと考えるし、眠けりゃアすぐに寝ること考えるし。そういうとこが本当に意味分かんないそうだ。
逆に言えばそういうとこがおれだって意味分かんねェつーの。
「やっぱモテますよねエースさん」
「いや、別にそういうわけじゃ...」
「俺だってオンナならエースさん好きになるし」
「なっ、何言って、」
爽やか笑顔、無邪気な雰囲気、見え隠れする優しさ。
以上がおれの素敵なとこだそうだ。正直、悪い気持ちはしねェけど言ってること意味分かんねェ。
「え、何、宍戸っちってそういう趣味?」
「なっ、違います!!」
「おれがオンナだったら、おれみたいなのは嫌だなァ」
おれみたいなヤツ、彼女はどう思うだろうか。
「.........嫌じゃないと思う」
「へ?」
静かに響いた宍戸っちの声。
「何でもないッス」
一瞬、おれの心の声が聞こえたのかと思った。
「俺はエースみたいなのは嫌だな!」
「言ったなァ。お前には何も奢らねェ!!」
もし、それが彼女が口にした言葉だったら...そう考えて、考えたけど首を振った。
2015/02/25 17:54
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