EVENT | ナノ

#03

俺は思った。あの店の兄ちゃんは――...


こないだ岳人たちと此処に来た時、初めてそれに気付いた。
何か岳人もよく来てるらしくってその兄ちゃんと軽く話してて...で俺を見た瞬間、

「あ、」

だって。普通そこで止まるか?俺、結構通ってんのに「あ、」って。
それからの作り笑顔で「い、いつも女の子と来てくれてるよな」って言われて気付いた。
この人、リア充爆発しろ!って思ってんじゃないかって。

「え?誰と来てんの?」

あ、ヤベ。すっげえ面倒なヤツに知られた。
岳人、すぐに嘘ばらまくんだよな...けど、まあ、アイツなら大丈夫か。

「幼馴染み。ほら、こないだ...俺に回し蹴りした、」
「ああアイツ!見た見た!すっげえ回し蹴りしてた!超ウケた!」
「.........たかがCD割っちまったくらいでマジで」
「え?それだけで?」
「おう...」
「ひっでえ!!」

ゲラゲラ笑う岳人の横で例の兄ちゃんがぽかーんとなってた。
ま、アイツがそういうことするようには見えなかったんだろうって思った。けど、

「ぷっ、」

兄ちゃんは吹き出して笑い始めた。
何か憑きもの取れたみたく笑って「ごめん、笑ったこと、あの子には内緒にしといて」ってさ。


俺は思った。あの店の兄ちゃんは――..."俺の所為で"作り笑いしてたんだ、って。

2013/03/22 17:10
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