【007号室 侑士】
「.........疲れた」
確認作業後、本当にドッと疲れちゃってベッドに腰掛けた。
こんなんじゃ先が思いやられる。生命ゲージがどんどん減ってるもの。
「ちゅうか、これで仕事終わりやろか」
「え?」
「終わったら跡部に呼ばれてんやけど」
.........あれ?何その反応。
「今日は泊まりでしょ?しかも私と相部屋で」
「.........何、言うてんの」
それはこっちの台詞。チケットと一緒に詳細資料が同封されてなかった?
宿泊費、食事はタダで給料が出るんだよコレ。社内抽選だったみたい。
その代わり、誰とも知らない相方がいるとはあったけど...異性だったとは。
「ちゃんと資料読んでないの?」
「資料とか入ってへんかったんやけど」
「嘘。一応、持って来たけど見る?」
バッグから取り出した資料を忍足に手渡すと、それをじっくりと確認している。
いや、資料といっても大した資料ではなく淡々と事が綴られてるだけ。ガン見するほどではない。
「.........知っとって来たんですか?ノコノコ」
「仕事だもの。ただパートナーが異性だとは思わなかったのよ」
「.........仕事、」
「相方が私で申し訳ないけど、そこは諦めてもらえないかな?」
此処で放棄されても正直、困る。だって気持ち悪いもの、この施設自体が。
「ほんまは俺に帰られたら嫌なだけでしょ?」
「うぐ。そ、そりゃ、怖いし心細いし...」
「ほな貸し1ですね」
「え!?」
何故かシタリ顔の忍足が余裕の表情で私を見ている。
あれだ。プレゼン中に嫌味な質問をする時の顔だ。さっきは仲良くしようと提案してくれたのに!
「嫌ならええです。俺帰ります」
「ちょっ、待って!それは嫌!絶対嫌!」
にっこり微笑む忍足がこんなにも怖いとは知らなかったよ。
「ほな貸し1」
「.........分かった。でも、出来ることと出来ないことはあるからね」
「そんなん重々承知しとりますよ」
.........本当かしら。
でも、いざとなれば誤魔化しちゃえばいいよね。口約束だし、踏み倒しちゃえば...
「因みに今の録音しとりますから。踏み倒さんで下さいね」
「.........忍足、副職はエスパーなの?」
「先輩の考えとることくらいお見通しです」
敵わない。敵わないんだよこの男には。
大事なプレゼンの半分以上が忍足に軍配が上がるのはこういうとこがあるからなのよね。
これは私のチームメイトも重々把握していることだけど打破出来ることは少ない。
「けどなあ...俺、着替え用意してへんのですけど」
「あ、その件だけど私も準備はいらないって聞いてるの」
「どういうことですのん?」
「必要物に着替えとは書かれてなかったから聞いたの。そしたら準備しとくって」
下着も?って話だけど、そこは私は自分で用意してるけどね。
そんな話を忍足としていたら部屋のインターフォンが鳴った。その音に私たちはお互いに顔を見合わせた。
「.........出ます?」
「忍足......付いて来て。お願い」
部屋の鍵を開ける