NOVEL GAME γ | ナノ

if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 侑士】
「.........疲れた」

確認作業後、本当にドッと疲れちゃってベッドに腰掛けた。
こんなんじゃ先が思いやられる。生命ゲージがどんどん減ってるもの。

「ちゅうか、これで仕事終わりやろか」
「え?」
「終わったら跡部に呼ばれてんやけど」

.........あれ?何その反応。

「今日は泊まりでしょ?しかも私と相部屋で」
「.........何、言うてんの」

それはこっちの台詞。チケットと一緒に詳細資料が同封されてなかった?
宿泊費、食事はタダで給料が出るんだよコレ。社内抽選だったみたい。
その代わり、誰とも知らない相方がいるとはあったけど...異性だったとは。

「ちゃんと資料読んでないの?」
「資料とか入ってへんかったんやけど」
「嘘。一応、持って来たけど見る?」

バッグから取り出した資料を忍足に手渡すと、それをじっくりと確認している。
いや、資料といっても大した資料ではなく淡々と事が綴られてるだけ。ガン見するほどではない。

「.........知っとって来たんですか?ノコノコ」
「仕事だもの。ただパートナーが異性だとは思わなかったのよ」
「.........仕事、」
「相方が私で申し訳ないけど、そこは諦めてもらえないかな?」

此処で放棄されても正直、困る。だって気持ち悪いもの、この施設自体が。

「ほんまは俺に帰られたら嫌なだけでしょ?」
「うぐ。そ、そりゃ、怖いし心細いし...」
「ほな貸し1ですね」
「え!?」

何故かシタリ顔の忍足が余裕の表情で私を見ている。
あれだ。プレゼン中に嫌味な質問をする時の顔だ。さっきは仲良くしようと提案してくれたのに!

「嫌ならええです。俺帰ります」
「ちょっ、待って!それは嫌!絶対嫌!」

にっこり微笑む忍足がこんなにも怖いとは知らなかったよ。

「ほな貸し1」
「.........分かった。でも、出来ることと出来ないことはあるからね」
「そんなん重々承知しとりますよ」

.........本当かしら。
でも、いざとなれば誤魔化しちゃえばいいよね。口約束だし、踏み倒しちゃえば...

「因みに今の録音しとりますから。踏み倒さんで下さいね」
「.........忍足、副職はエスパーなの?」
「先輩の考えとることくらいお見通しです」

敵わない。敵わないんだよこの男には。
大事なプレゼンの半分以上が忍足に軍配が上がるのはこういうとこがあるからなのよね。
これは私のチームメイトも重々把握していることだけど打破出来ることは少ない。

「けどなあ...俺、着替え用意してへんのですけど」
「あ、その件だけど私も準備はいらないって聞いてるの」
「どういうことですのん?」
「必要物に着替えとは書かれてなかったから聞いたの。そしたら準備しとくって」

下着も?って話だけど、そこは私は自分で用意してるけどね。
そんな話を忍足としていたら部屋のインターフォンが鳴った。その音に私たちはお互いに顔を見合わせた。

「.........出ます?」
「忍足......付いて来て。お願い」

部屋の鍵を開ける





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 侑士】
「フロントです。着替えをお持ち致しました」
「「.........」」

ドアを開けるとワゴンを押して来たと思われる青年が居た。
いや、青年というか......誰をモデルにしたのか全く分からない程にイケメンなアンドロイドだ。

「.........これ、誰かに似てません?」
「.........跡部と忍足が部分的に混じってる気がする」

そう...何か色々な人のパーツが組み合わさって出来てる気がする。
そんなロイドくんが何かを認識しながら紙袋を一つずつ私たちに突き付けた。

「こちらが貴方様のお着替えです」
「あ、ああ...」
「こちらは貴女様のお着替えです」

個別認定はされていても名前はプログラムされていないらしい。
ウィーン、カタカタ...と鳴っている音が何とも言えない。高性能なんだけど何かね。
この音をもう少し消音化して表情を付けたらもっと凄いと思うんだけど...

「それでは失礼致します」

ゆっくりお辞儀してロイドくんはワゴンを押してエレベータの方へと向かった。

部屋に戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 侑士】
ロイドくんから受け取った紙袋を片手に私たちはしばしフリーズしていた。
多分、一日を終えた時より疲れてて帰りたくて堪らないんだろうと思う。

「.........着替えようか」
「.........せやね。何や疲れたし」

うん、もっとラフなものに着替えておきたい。
さっきハンガーも見つけたし、着替えてもスーツは干せるし。

「ほな先輩は脱衣場どーぞ。俺は此処で着替えますよって」
「うん。着替えたら声掛けるよ」
「そうして下さい」

見つけたハンガーを1セット忍足に手渡して可愛らしい紙袋を手に脱衣場へ向かう。
よく考えたら...どんな着替えを渡されたのか確認するのを忘れてた。
ガサゴソ、新品の袋を取り出して一緒に梱包されてた紙を見て...絶句した。

絶句してガン見して...おそらく忍足も同じだろうと思うけど叫び声はない。
何の文句もないということは......着替えてるのか?

着替える





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 侑士】
「.........着替えた?」
「.........ええ」

お互いに声のトーンもテイションも下がりまくりだ。
正直、こんな姿を誰にも見られたくない。でもこのまま此処に居座ることも出来ない。
だからゆっくりと脱衣場から出ると......そこには同じような服を着た忍足が居た。

「.........ブラッディーポリス?」
「.........そうです。ペアルックみたいですね」
「.........似合うよ」
「.........先輩は足出し過ぎや思います」

出したくて出してるわけじゃないよ。短過ぎて出るんだよ。
今まで生きて、ここまで短いスカート履いたことは学生時代でもないよ。最悪。
でもそれ以外でいえば...あまりスーツと変わりはない。まあ、何か色々とパツパツだけどさ。

「「.........」」

どんより、お互いがどうしようもない空気に見舞われてます。
沈黙。色々複雑な気持ちが悶々と湧いてる所為か話す気力もない。
そんな時だった。

――ドンッ。

私たちの肩がビクッと震えて音がした方を見る。ドア付近、さっきまで無かったものが、ある。
箱だ。どういうことか分からないけど、プレゼントみたいな箱が落ちてる。

「.........俺、取って来ますよ」
「.........うん、お願い」

ポーカフェイスの忍足があっさりと箱を回収して来た。
毒々しい赤いリボンの掛かった箱...特に中から音とかはしていない。

「爆発物ではないみたいね...」
「ちゅうか、こんな近場で爆発されても困ります」

うん。でも規模の小さな爆発物も最近はあるじゃない。それが怖い。
警戒しながら箱を見ていたら、特に気にした様子もなく忍足がソレを開けた。

「.........こんなん入っとりましたけど」
「.........ペンダント?」

出て来たペンダントは二つ。そのうちの一つを私の手の中へ落とした。
紋様入りの石付き...五芒星が刻まれてる。魔除けってやつかな。

「手の込んだ発信器みたいですよ」
「発信器?」
「そない書いてあります」

忍足がペラッと見せてくれたのは...説明書だった。

「脱走防止の警報が鳴らんみたいや」
「.........凝ってるなあ」
「これがこのタイミングで落ちて来たっちゅうことは...」
「出掛けろってこと、ね」

げんなりする。この衣装で出掛けろと?生足出して?
それに...厄介な機能が動いたりしないでしょうね。普通に怖いんですけど。

「どうします?」
「行かないと...いけないんでしょうね」
「ほな、先輩頑張って」
「え!?忍足は行かないつもり!?」
「貸しプラス1」

.........酷い忍足。仲良くする気は本当に無いらしい。
愛想笑いをする忍足に「なら一人で行くわ」とも言い切れず再び頭を下げねばならないのか。
色々泣きそうになりながらもお願いしたら...貸しが2に増えた。勿論、録音された。

出掛ける





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 回想】
忍足と部屋を出て、廊下を端から端まで散策。仕掛けは特になし。
エレベータは相変わらずの鏡張りで血糊べったり。気持ち悪い。
フロントへ降りるとロイドちゃん(弐号機)が居て...何故か外には出られない。
そのエリアをちょっと散策しようとしたら所々でけたたましい音が響いた。
立ち入り禁止エリアがあって、立ち入るんじゃねえよ!と言われてるみたいだった。
さすがの忍足もビクッとしてた。これはちょっと笑えた。

因みにロイドちゃん(弐号機)に「部屋を分けて欲しいと告げる」と、
「お部屋の変更は何があってもご遠慮頂いておりますのでご了承下さい」と言われた。

同じエリアには例の商品を販売している場所もあって、
ロイドくん(イケメン)が応対してくれるらしかった。相変わらず表情は乏しい。
ついでに衣装だけでなくお菓子なんかも売られていた。試食は不可。
アルコールなんかも販売されているらしいけど、免許証等を出せと言われた。

そこからまた血糊ベッタリのエレベータに乗る。
ボタンは2(食堂)、1(フロント)、B1、B2とあるけど押せたのは1とB1のみ。
どういう操作なのか、全く反応しないってことは...仕掛けなんだろうと思う。

.........と、いうことで散策終了。
カードキーで007号室へと戻って来た。

部屋に戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【007号室 侑士】
「.........あれ?」

ぐったりして戻った部屋にあからさまに変化があった。
まず、机に置きっぱなしにしていたペンダントが入っていた箱が消えている。
その代わりみたいに置かれている一輪挿しの...椿。何か怖い。

とことこ近付いて、ふと傍にあった三面鏡の扉がうっすら開いていることに気付いた。
当然、見えちゃうわけです。血糊で書かれた「read me」という文字...

「.........ッ」
「あー...」

鏡の血文字、一輪挿しの椿...その花瓶の下にメッセージカードがあることに気付いた。
白いカード、赤のインク、綺麗な字でたった一言「食事の準備が整っております」と。

「けったいな案内状ですね」
「.........そうだね」

冷静にカードを見てふーん程度の落ち着きを保てる忍足は凄い。
ドッと疲れて大きな溜め息を吐いた途端...椿の花がポトリとカードの上に落ちた。

「ひッ、」
「.........凝ってるやん」
「もう...言葉も出ないよ」

縁起でもない。落椿って...昔の人は首斬りを連想させる花だって言われてたもの。
全体的に洋風なのに、こんなところで和のテイスト持って来なくてもいいと思う。

「ほな、食事行きます?」
「.........そだね」
「そのうちエエことありますよ」
「うん...慰めありがと」

食欲はガタッと削れたけどコース料理。資料にあった。
で、これだけ凝ってるんだから料理も間違いなく美味しいはず。

さり気なく振り返って「行きますよ」と誘う忍足。
置いて行かれても嫌だから、慌てて忍足の後に続いた。

大食堂へ向かう





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【2F 大食堂】
タヴィンチ作、最後の晩餐を思い出した。
趣と言うか雰囲気ある大食堂だけど、うん、もう暗いよ色々。
ここまで長時間薄暗いところに居ると目が悪くなりそうな気がする。

「この家のモデル、跡部んちやろか...」
「え?噂の?忍足行った事あるんだ」
「.........同級生やからね」

長すぎるテーブルにはきちんと私と忍足の名前が書かれたカードが置かれていた。
このイメージだと端端、会話も出来ない両端に追いやられて淡々と食事をするのかと思った。
配慮?いや、別に食事は淡々と食べてもいいんだけど...
対面配置で...忍足はわざわざ回り込んで向こうへ行かなければならないらしい。

「.........面倒やなあ」
「これは改善すべき点だわね」

溜め息吐きつつ、忍足は向こうのテーブルへと移動していく。
まあ...飛び越えるにしても無理があるし、下をくぐるとか忍足らしくない、か。

「.........ほんま、叩き割ったろかいな」
「それは止めて。連帯責任とか困るから」

忍足が自分の席に辿り着くまでに数分。
ちょっと呆然と見てしまったけど、ようやく席につけそうだ。

「お疲れ様」
「労いどーも」

着席すると何故か食堂内にチリンチリンチリン...と鈴の音が響き、
カートの音だろうか、食事を運ぶ音が聞こえ始めた。

「手が込んでるね」
「先輩やったらチンベル置きそうやね」
「それってどういう意味よ」
「居酒屋とかファミレスによう行きはるやろ?」
「.........なんで知ってるのよ」

と、忍足に問い掛けた時、生身の人間が料理を運んで来た。
重々しいカートを押して来たのはイケメンの男性、但し、腐乱気味。
それを配置してくれたのは美人の女性。但し、こちらも腐乱気味。
つまり、ゾンビ系でいらっしゃいます...その美貌が勿体ない。

「.........エグいわあ」
「.........エグいね」

よく出来た腐乱男女に見守れらながら食事って...どうよ。
ある程度の準備が整ったところで注がれたシャンパンで一応乾杯し、食事を頂いた。
食事自体は文句なしで美味しかったけど...サイドに控える美ゾンビさんたちには引いた。

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if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう

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