NOVEL GAME γ | ナノ

if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【2F バルコニー】

敷地の割に部屋数が少ない…税金対策とも言えるこの洋館。
2階なのに出入り口と同じところに扉があったから来てみればバルコニーだった。
おそらくアレだ。玄関の雨よけスペースを利用して作ったんだ。にしちゃ…広いけど。
無駄におっきな月もよく見える。この時期の月って本当に綺麗だ。

「中秋の名月にも劣らないなあ…」
「そらそうたい。あの月は…」
「わっ!」
「……何ば驚きよんしゃーとね」

普通に驚くわ!気配無く真後ろに立たないでよ!!

「失礼なやっちゃ」
「……(アンタに言われたくない)」

にしても、千歳が言い掛けた「あの月は…」の続きがちょっと気になるかも。
あ、でも千歳のことだから適当なことを思いついたままに言うだけかも…
今見えるおっきな月、かあ…どうしよう。話を聞くだけ聞くだろうか。

とりあえず信憑性ゼロでも聞いておく
どうせ下らないことだろうから聞かない





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「……人の話ば聞かんとは、悪い子ばい」
「はっ?」

デマカセ聞くのも何だからって別のところに行こうとする私を千歳が掴む。
否応なしに振り返って見たのは…ニタリと笑う彼でゾクッと背筋が凍る感覚…
な、何なんだこの威圧感と言うか恐怖心は。とてつもなく嫌な予感がする。

「悪い子には罰ば与えなね」

そう言った瞬間、急に足元が透けて…透けたっ!?

「晩餐に相応しい姿になればよかよ」
「ぎゃっ!」

嘘!嘘嘘!透けて落ちるとかそんなカラクリ聞いてないよ!
ぎゃーじゃ済まない事態になる!二階からでも相当高さあるし!!
ヤバイ!落下の瞬間はスローになるって言うけど…それ嘘じゃないのね!!

「痛いのは勘弁!!……って、」

ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起き上がった私は不意にベッドサイドのカレンダーを眺めた。
10月31日…今日はハロウィン、じゃん。まさか…何かの暗示なんかじゃない、よね?

★エンディングNo.01

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if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「あの月はこの屋敷に向かって動くとばい」
「……はい?」
「月喰いの屋敷、毎年この時期に月はこの屋敷で生まれ変わる」

……それは屋敷が月を喰うから、ですか?
信憑性のないことは言うだろうなあとは思っていたけど、ここまで適当だとは。
今まで色んな漫画だの小説だのゲームだの…まあ色々観てきたけど、そんな設定はないね。
屋敷が月を喰う、ハイハイ。なシナリオにお姉さん溜め息吐いちゃいますよ。

「……信じとらんね」
「……まあね」

ふーっと溜め息を吐いちゃうところをみれば、やっぱり適当シナリオだったらしい。
これだから千歳は信用出来ないんだよね…大体、神隠しって技だって意味分かんないしさ。

「まあよかよ」
「え?何その妥協してやるみたいな言い方…」
「つべこべ言わんと次行かんね」

次…何でそんなに次へと行かせるつもりなんだろう。

エントランスへ





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F エントランス】

「晩餐までまだ時間があります。ご自由に屋敷をお回り下さい」
「……薄暗くって回りづらいんだけど?」
「最小限の灯りしか付かんったい。我慢して回らんね」

古いけど立派な建物の分際で電気が付かないと?
手早くリフォームすることを薦めるわ。いっそ作り変えてもいいくらい。
それにしても…本当に薄気味の悪いったらありゃしない。
廊下に煌々と光るランタンの灯りが更に不気味さを演出しているし。

「……回ることに意味でもあるわけ?」
「俺と時間潰すか?」
「いや、それは遠慮」

千歳と時間潰ししたところでおそらく意味はないと思われ…
いやね、楽しいかもしれないけどさ。そこそこ話題も尽きると思うし。
もっと言えばなーんかいつもの千歳っぽくないから変なカンジだし。
仕方なく暗がりの廊下を眺めながら、向かうべき先を考えた。

1F フロア
 応接間へ 厨房・食堂へ 大広間へ
2F フロア
 右の部屋へ 中央の部屋へ 左の部屋へ

「ん?エントランスの隅に誰か居る…」





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1Fエントランス隅】

「……あ、不二兄弟だ」

めっずらしい2ショットじゃない。なかなか見れたもんじゃないよコレ。
弟大好きな兄・周助と、ソレと比較されて劣等感に苦しむ弟・裕太。
ああ、カメラさえあればこの2ショットは絶対売れたのに!!(激レア)
……でも、何かモメてるっぽいなあ。仲良しショットの方がバカ売れするだろうに。

「兄貴!何でこんなモンに変えやがった!」
「え?可愛いからに決まってるじゃない」

ちょっとだけ近付いて会話を盗み聞き。どうやら兄は弟が本気で可愛いらしい、っと。
それにしても不二兄ってば魔法使いちっくな服装と杖が似合いすぎ。
もっと言えば…犬耳、犬尻尾な不二弟はもっと似合いすぎー。(てか可愛すぎ)
何か言い争っているみたいだけどソレはさておいて微笑ましいですネ。

「そういう自覚がないのは良くないなあ」
「知らねえし!」
「そんなだから僕は心配で心配で…」
「だったらこんな姿にしてんじゃねえよ!」
「えー似合うのに…」

今にも「ガウッ」と噛み付きそうな不二弟と今にも「キュン」として抱きしめちゃいそうな不二兄。
なーんか自分の存在がお邪魔虫っぽく感じるなあ。でも、このやり取りは見てたい。
そんなことを考えてみたりしていたものの、彼らが一向に私に気付く様子はない。(それはそれで寂しい)
仕方なく、ある程度その様子を堪能してから私はエントランスへと戻ることにした。

(本当に微笑みしい兄弟だわ)

エントランスへ





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F エントランス】

「晩餐までまだまだ時間があります。ご自由に屋敷をお回り下さい」
「……薄暗くって回りづらいんだけど?」
「最小限の灯りしか付かんったい。我慢して回らんね」

古いけど立派な建物の分際で電気が付かないと?
手早くリフォームすることを薦めるわ。いっそ作り変えてもいいくらい。
それにしても…本当に薄気味の悪いったらありゃしない。
廊下に煌々と光るランタンの灯りが更に不気味さを演出しているし。

「……回ることに意味でもあるわけ?」
「俺と時間潰すか?」
「いや、それは遠慮」

千歳と時間潰ししたところでおそらく意味はないと思われ…
いやね、楽しいかもしれないけどさ。そこそこ話題も尽きると思うし。
もっと言えばなーんかいつもの千歳っぽくないから変なカンジだし。
仕方なく暗がりの廊下を眺めながら、向かうべき先を考えた。

1F フロア
 応接間へ 厨房・食堂へ 大広間へ

2F フロア
 右の部屋へ  中央の部屋へ  左の部屋へ





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【階段付近】

「……ヒッ!」

何か居る何か居る何か居る上に何かイチャコラしてる!キモイキモイ!
激鳥肌もの!てかあれは…ロミジュリごっこをわざわざ階段でやってる小春ちゃんと一氏!!
うえー…何たってこんなとこに居るんだよ。しかもカツラ似合ってないよ小春ちゃん…

「キモすぎる…」
「同感ですわ」
「てか、見苦しいな」
「……撃ち落とすか?」
「オイオイそりゃ犯罪だ」

うおー!気付かぬうちにめちゃくちゃ人来てたー!
財前、神尾、薫ちゃんに桃!これはこれで…異色だなあ、何の集まりで何でまた中世貴族風なんだ?
……はっ!目の前のロミジュリ衣装の友達じゃん皆!結局加担してんの?このキモイ二人に!

「つーか、アイツらが階段占拠してたら俺ら上に行けねえなあ」

うん、奴らを無視して上がる勇気が無い。下手したらその意味不明な演劇に混じるハメになるかもしれないし…
おそらく他の人もソレを恐れての尻込みだと思う。と、いうよりもそんなの抜きでマジキモイんですけど。

「……私、諦めた」

これが賢明な選択だと判断した私は、誰よりも先に階段から離れた。
その後、私に続いて来る人なんか居なかったから…うん、考えないようにしよう。

(あれって…公然わいせつにならないのかしら)

エントランスへ





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【1F エントランス】

「晩餐までもう少し時間があります。ご自由に屋敷をお回り下さい」
「……ねえ」
「どがんしたね」
「階段のとこにキモいカップル居たんだけど…」

撤去してもらわない限り、どう足掻いても通れない気がする。勿論、他の人も。
その旨をとにかく千歳に話して撤去を要請してたみんだけど…

「人の恋路を邪魔する奴は窓の月さえ憎らしい」
「……はあ?」
「日本の諺たい」
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、じゃなくて?」
「同じようなもんばいソレ」

て、ことは、ですよ?アイツら撤去しない方向かよ!!
それじゃあ上のフロアへ行けないってことじゃん!!(自分で撤去する気はない。むしろ無理)
あーあ、使えないなあ千歳は。じゃあもう…どうしよっか。

1F フロア
 応接間へ 厨房・食堂へ 大広間へ
2F フロア
 右の部屋へ  中央の部屋へ  左の部屋へ
 (キモいから2Fへはもう行けない...行かない!)

「くそう!ならもう帰ってやる!」





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
「まあ待つたい」
「はあ?待つも何ももう行くとこなんて――…」
「晩餐の準備が整ったばい。食事してからでも帰るのは良かろ?」

……晩餐、食事、豪華!!
うんうん、食べてから帰っても問題ない!むしろお腹もすいてきちゃったし食べてから帰ります!
てか、未だに何のための晩餐なのか何故私が呼ばれたのかも分からないけどさ。

「うん!食べて帰る!」
「……現金」

ふう、と溜め息を吐いた千歳はさておいて。
晩餐の準備が整ったということで続々と各部屋から人が出て来てゾロゾロと裏庭へと向かう。
これはもう仮装行列だ。仲が良いのか悪いのか、お互いに睨み合いながら同じ方向に向かってる人もいる。
ハタから見てて本当に凄い絵。うん、仮装行列改め、百鬼夜行だわ。

「ほれ、立ち尽くしとらんで行かんと」
「う、うん」

妙な団体と紛れて歩くのは少し気が引けたけど、少なくとも今は公衆の面前じゃない。
用意された食事にありつきたい気持ちもあって千歳に促されるがまま私は裏庭へと向かった。

晩餐会場・裏庭へ





















if...の扉 #10

アトランダム/迷える子羊
【裏庭 晩餐会場】

「うお!」

綺麗な薔薇に囲まれた素敵な裏庭にはすでに立食テーブルが設置されていた。
夜なもんだから外は暗いだけかと思ったけど今日は月が明々としてるから庭はとても明るい。
うーん…昔の人はこの光で勉強をしたって聞いたことがあるけど確かに出来なくないわね。

「さあて、私も何か食べよーっと」

皆が適当にあるものを摘まみ始めたのを見て、私もそそくさとテーブルへと移動した。
で、ふふふーんと鼻歌交じりに並べられたものを見て…愕然とした。

「……黄色い」

飲み物、食べ物、飾り、全てにおいて黄色一色。どう見ても…カボチャづくしだ。
カボチャ入り野菜ジュース(だと思われ)、カボチャスープ、カボチャのソテー、カボチャクッキー、カボチャケーキ。
で、カボチャの煮物、カボチャの天ぷら、パンプキンパイ、カボチャプリン…他にもまだあるけどとにかくカボチャだ。
……これって、カボチャの豊作祈願か何か?

「胃もたれしそう…」
「何か言うたか?」
「胃もたれしそうだって言ったのよ!」

ええい!一度で聞いとけ馬鹿千歳め!
大体、洋風テイストで何故煮物だとか天ぷらだとかの和物を入れたんだ?てか、スイーツもごっちゃじゃん!
むしろカボチャに統一しちゃった意味も分からないわ。菜食主義なのか?この晩餐の主催者は!(誰か知らないけど)
意味分かんないわコレ!と、千歳にブツブツ愚痴を言ってたらポツリ、何かを呟いた。

「え?何か言った?」
「……気に入らんかったとたい」
「そりゃそうよ。カボチャなんて特に――…って、」

ん?急に殺気と寒気を感知したぞ。物凄く嫌な予感がする…

「そうたい。よう考えたら菜食しか用意しとらんかったばい」
「……千歳?」
「肉、今すぐ用意せんばね」
「え?」

スーッと、まるでマジックみたいに腕の裾から取り出したのは…一本のナイフ。
長身かつ悪くないガタイの千歳、いつも穏やかな空気は無く何処か手塚のように無表情で木手のように冷たい。
まさかソレで私を殺す気か?ついでに調理してメインディッシュに仕立てるつもりか?

「大丈夫。美味しくしちゃるたい」

ちょっ、マジか?待て待て待て――……って、
ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起きた私。寝汗どころか寝てただけなのに息まで上がってるんですけど…
朝一からシャワーを浴びないと…と思い、起き上がれば…ポトッと何かの封筒が落ちた。表には「招待状」の文字。
昨日、何か用なんか作ったっけ?ベッドサイドのカレンダーを眺めれば今日は10月31日…
ハロウィン、ハロウィンパーティーの招待状?送り主は、ない。まさか…よね?

★エンディングNo.09

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アトランダム/迷える子羊

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