【裏庭 晩餐会場】
「うお!」
綺麗な薔薇に囲まれた素敵な裏庭にはすでに立食テーブルが設置されていた。
夜なもんだから外は暗いだけかと思ったけど今日は月が明々としてるから庭はとても明るい。
うーん…昔の人はこの光で勉強をしたって聞いたことがあるけど確かに出来なくないわね。
「さあて、私も何か食べよーっと」
皆が適当にあるものを摘まみ始めたのを見て、私もそそくさとテーブルへと移動した。
で、ふふふーんと鼻歌交じりに並べられたものを見て…愕然とした。
「……黄色い」
飲み物、食べ物、飾り、全てにおいて黄色一色。どう見ても…カボチャづくしだ。
カボチャ入り野菜ジュース(だと思われ)、カボチャスープ、カボチャのソテー、カボチャクッキー、カボチャケーキ。
で、カボチャの煮物、カボチャの天ぷら、パンプキンパイ、カボチャプリン…他にもまだあるけどとにかくカボチャだ。
……これって、カボチャの豊作祈願か何か?
「胃もたれしそう…」
「何か言うたか?」
「胃もたれしそうだって言ったのよ!」
ええい!一度で聞いとけ馬鹿千歳め!
大体、洋風テイストで何故煮物だとか天ぷらだとかの和物を入れたんだ?てか、スイーツもごっちゃじゃん!
むしろカボチャに統一しちゃった意味も分からないわ。菜食主義なのか?この晩餐の主催者は!(誰か知らないけど)
意味分かんないわコレ!と、千歳にブツブツ愚痴を言ってたらポツリ、何かを呟いた。
「え?何か言った?」
「……気に入らんかったとたい」
「そりゃそうよ。カボチャなんて特に――…って、」
ん?急に殺気と寒気を感知したぞ。物凄く嫌な予感がする…
「そうたい。よう考えたら菜食しか用意しとらんかったばい」
「……千歳?」
「肉、今すぐ用意せんばね」
「え?」
スーッと、まるでマジックみたいに腕の裾から取り出したのは…一本のナイフ。
長身かつ悪くないガタイの千歳、いつも穏やかな空気は無く何処か手塚のように無表情で木手のように冷たい。
まさかソレで私を殺す気か?ついでに調理してメインディッシュに仕立てるつもりか?
「大丈夫。美味しくしちゃるたい」
ちょっ、マジか?待て待て待て――……って、
ハッと目を覚ませば、見覚えある空が、見えた。てか…私の部屋の、天井?
寝汗をふんだんに掻いて起きた私。寝汗どころか寝てただけなのに息まで上がってるんですけど…
朝一からシャワーを浴びないと…と思い、起き上がれば…ポトッと何かの封筒が落ちた。表には「招待状」の文字。
昨日、何か用なんか作ったっけ?ベッドサイドのカレンダーを眺めれば今日は10月31日…
ハロウィン、ハロウィンパーティーの招待状?送り主は、ない。まさか…よね?
★エンディングNo.09
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