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if...の扉 #08


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紺碧の扉


うん。花柄が定番だよね。向日葵柄が本当に可愛い。
しかも、ちゃんと4点セットになってるじゃん。流石だね。
浴衣、帯、バッグ、下駄。単品だったらまた迷うとこだったわ。良かった。

コレは…あ、何かセットにはあってるけど本格的っぽいなあ。
袖を通した時に分かったんだけど少し昔のものみたい…どうしよう。
うん。コレは母上に頼んで着せてもらおう!帯のリボンとか作れないし。

……よし。母上さんきゅう。コレで完璧さ!多分!

髪型もまあ…これでいいし、少しだけメイクすればいいかな?
うんうん。これなら知ってる人に会っても変じゃないし、ナンパもばっち来い!
少しテイションが変になりつつ、鏡を見ていたら不意に下で私を呼ぶ声がした。

ん?誰だろう…
む?誰かと約束したっけ?





















if...の扉 #08


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紺碧の扉


「おや?浴衣とは珍しい」
「き、木手?な、何やって…っ」

玄関を開けたら…うわ、何だ何だ?何とも無表情な木手様が参上してらっしゃるんですけど!
あれ?何か約束なんかしてたっけ?物凄いタイムリーではあるけど…え?何さ、殺し屋の襲撃、ですか?

「君とお祭り行こうかと思いまして」
「え?な、何さいきなし…」
「どうせ君のことです。かき氷食べてホットドック食べて、とするんでしょう?」

うぐっ、イタイとこを…って、いやいやいやそうではなくてね。私の願望交えたことをいきなし語られても、ねえ。
間違っちゃない、間違っちゃないけど違うでしょ。え?何?突然来ていきなし拉致されんの私…

「いや…ちょい待ち」
「準備も出来てるようですし、行きましょうか」
「いや、そうじゃなくてね…って、おわ!」

何も決断して無いにも関わらず、マイペースなのか強制なのか考える間もなく私を引っ張る殺し屋・木手永四郎。慌てて玄関先に放っぽり出していたバックを片手に、強制的に木手と一緒にお祭りに行くことになった。

一緒にお祭り会場へ





















if...の扉 #08


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紺碧の扉


お祭り会場となる神社の境内は投光器の灯を借りて、物凄く明るいものになっていた。
決して広くは無い境内に沢山の出店もあって来客も上々。普段とは比べものにならないくらい賑わってる。
この中には観光客もいれば外国の人も混じってて…あらやだ、ちょっと遠いけどイケメン発見。

「……迷子になりますよ志月さん」
「おわ!」
「本当に君は世話が焼けそうだ」
「ちょっと木手!子供じゃないんだから手は…っ」
「その辺の子供と君と、何が違うと言うんですか?」

違うし!と言ってやりたかったけど…うん、違わない気がした。
ほら、隣の子はジッとスピードクジの商品を見てる。さっきの私は遠い場所に居たイケメンを見てた。あ、うん。その辺をババーンと指摘された日には反論とか出来なくなりそうだから…従うしか、ない。
でもさーわざわざ手を繋ぐ必要とか、ないと思うんだけど…(相手が殺し屋さんなんで言えないんだけどさ)あーこんな姿見られたくないなークラスメイトとかクラブメイトとか、名指しで言うなら甲斐とかに。アイツ何気におしゃべりだし。

「全く…で、志月さんはどれに興味がありますか?」
「ほえ?」
「君が選んでいいですよ」

かき氷(苺ミルク)が食べたい
ヨーヨー釣りがしたい





















if...の扉 #08


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紺碧の扉


「分かりました。では大人しく待ってて下さい」

ま、マジですか。殺し屋自ら的屋潰し…
いや、商品購入に?(露店の兄ちゃんを脅さないでくれ)「お金は…」と一声掛けたなら振り返って「奢りますよ」とは言ってくれたものの、何か怖い。裏とかありそうで。
それにしても木手はこういう場所に居るのは似合わないなあ。これで浴衣姿だった日には逆に露店の兄ちゃんだわ。無表情でたこ焼きを焼く、無表情で接客をする、ニタリと笑ってぼったくる……おお、適材適所じゃん。
とか考えながらその場で待つこと数分。やっぱり無表情な木手がかき氷を片手に戻って来た。でも、その片手に握られてるのは私が頼んだ苺ミルクのだけ。木手はいらなかったのかな?別にかき氷じゃなくてもさ。

「お待たせしました」
「あ、有難う。ねえ、木手の分は?」
「俺はいいんです」
「そう?じゃ遠慮なく食べちゃお」

わーい、早速食べてしまえーと手を伸ばしてみたものの…何故か木手がソレを手渡そうとしてくれない。え?有難うだって言ったし、木手はいらないって言った、よね?え?何がいけなくてこの状態なわけ?犬で言うお預け、みたいな。
変な戸惑いを抱えつつも恐る恐る見た木手は相変わらずの無表情。い、嫌がらせですか?天下の木手様なのに。

「君はこんな場所で食べるつもりですか?」
「へ?」

何?買い食い厳禁ってことですか?とワタワタしていれば、またも強制的に木手に引っ張られて行くことになった(厄日か?)。

こ、これは誘拐とかじゃないですよ皆さん!





















if...の扉 #08


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紺碧の扉


境内を少し外れた場所に丁度、座り心地の良さそう…いや違うか。丁度良い高さの石があってそこに移動した。
ベンチでもあればいいのに、そう思ったところだけど皆考えることは同じみたいで何処も人が居て。仕方なくそこに腰掛けて食べることに。それにしても今日は風が吹いてくれて気持ちいいわ。とは言っても潮風だけど。

「今日は結構涼しいねー」
「そうですね。夏も終わりに近付いてるんでしょう」

んーそうかもしれない、と思いながらかき氷を食べる私の横で「君、課題は終わってますか?」とか聞く木手。その余計な一言に思いっきりいらんところに氷が流れちゃって…ムセた。んなこと聞かなくても分かるだろうに!終わってたら神だよ!

「ゴホゴホッ!」
「あーあ…大丈夫ですか?コレ、使って下さい」

手渡されたハンカチを遠慮なく口元に当ててダイナミックに咳き込んでいれば木手が背中をさすってくれた。「咳き込むほど溜め込んでるんですね」と余計なことを呟きながらだけど、さすってくれてることで落ち着いて来たから許すとして。
大体、馬鹿みたく課題出す方がおかしいんだよ。てか、何で向日葵(持ち帰り苗木)の成長日記とか付けなきゃいけないわけ?小学生じゃあるまいし…でも、適当に世話してちゃんと咲いてくれた私の向日葵はエライね。

「で、結構残ってるんですか?」
「……過半数、てとこ、だね」
「でしたら俺が君の面倒を見てあげますよ」
「え?課題写させてくれるの?」

と、目を輝かせてみれば…どうやら写させてくれるわけじゃなく、単にコッテリ絞り上げの勉強会をさせる、という意味だったらしい。
うーん…どうするかな?どのみちこのままじゃ課題は終わる気配もないし、いっその事、木手に絞られてやった方が…い、いや待て。そーいえば裕次郎が言ってたっけ。木手はスパルタでソレに付いて来れないヤツは容赦なく竹刀でブン殴るって…っ。

「や、やっぱり、じ、自分で何とか…」
「それは無理でしょう?君は君ごと、俺に任せて下さればいいんですよ」
「……へ?」

木手はそう言うと、食べるか食べないか瀬戸際のところにあったかき氷入りのスプーンに唇を寄せた。
パクッとそれを食べられた時にはただ驚いただけだったけど「間接キスになりますね」と呟かれて…何か、嫌でも、何かを悟った気がした。

-LOVE END-
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紺碧の扉


「君、ちゃんと取れるんですか?」
「なっ、どういう意味よ!」
「言葉通りですよ。君、鈍そうですし」

失敬な!と言ってやりたかったけど…うん、ちょっと強く否定出来ない自分が居る…こういうゲームとか大好きなんだけどさ、それになかなか比例しない実力がありまして。要は不器用。金魚でも掬おうとすれば初っ端からポイを破いちゃうタイプ。で、見兼ねた兄ちゃんがもう1個くれるという (そしてまたすぐ破る)。かといって射的をすれば近場でも外し、輪投げだと場外へとぶっ飛ばして爆笑されたこともある。

「う、運が良ければ取れるわよ」

そう、実力はそんなものでも運さえあれば何だって出来る!……はず。

「運も無さそうですね」
「そ、そんなことは…」
「まあいい。実力も運も見せて頂いたら分かりますし」

くすっと笑われて「こっちにありますよ」と指差す木手。私の目線ではよく見えなくて一生懸命背伸びをした。
うん、確かに向こう側で取れただの何だのと声がするから間違いない。うし!と気合いを入れ直してれば木手は歩き出してた。

「ちょっ、待ってよ!」
「本当に鈍いですね。どうぞ」

と、差し出された手。結構な人混み、履き慣れない下駄、木手曰く迷子になられても困る、らしい。
確かに私自身も迷子になるのは嫌で…仕方なく手を取った。少しだけ冷たい彼の手が心地良い気がした。

だ、誰も見てないよね?





















if...の扉 #08


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紺碧の扉


ヨーヨー釣りの屋台に到着すると同時に手際良い木手がすぐに釣り代を払ってくれた。
私の分と自分の分と…そこは有難く奢って貰いまして、いざ出陣!と言わんばかりに意気込めば隣でまた笑われた。

「気合いじゃ取れませんよ」
「うるさいなあ、取れるかもしれないじゃん」
「無理だと思いますけど…まあお手並み拝見ですね」

ええい見とけよ!だけど集中力欠けるからガン見はしてくれるな!
一点集中して…あ、ブルーのヨーヨーが可愛いからアレにしようかな。ちょっと遠いけど釣りやすそうだし。と、少しちっちゃな子と混じりつつドキドキしながら釣り紙をゆっくりと水の中へ降下。釣り針が無事に輪に掛かったのを見て――…

「……あ!」
「やっぱり」

思いっきり引き上げたのが悪かったのか、釣り紙がある程度のところでブツンと切れてしまった。
これには隣で釣り上げに成功したちっちゃい子も「ヘタクソ」と笑ってる。ガックシだ。てか、昔はもっと上手に出来たんだよ!一応!はあ、と溜め息。でも諦める気は全く以って無いから自腹でチャレンジしたれーと思っていれば木手に止められた。

「何度やっても同じです。その青いのでしょう?」

ムカッと来ないわけじゃないけど多分事実だ。何度やっても取れるかどうかは分からない。
しゃがみ込んだまま考え込む私の頭上、ゆっくりと降りて来たのは…木手の手と釣り針。え?座らずにやるわけ?そう思ったけど…忘れてた、木手は驚異のバランス力を持つ男だった。

「ほら、不器用さんに差し上げますよ」

物凄く取り辛そうな態勢にも関わらずヨーヨーを釣り上げた木手がそう言って、私が手を出すと同時に糸が切れた。水滴の滴るヨーヨー、しかも私が欲しかった青いヤツ。不思議な感じで私はただ呆然と眺めていた。さっき私に「ヘタクソ」と言った子もちょっと驚いてる。

「……あなたねえ」
「え?」

本当に呆然としてた私を目覚めさせたのは木手からの一言。
「お礼も言えないのは小学生以下ですよ」なんて言われたから勢いよく立ち上がって大きな声で礼を言ってやった。

-LIKE END-
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紺碧の扉


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