テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

「最近、仲良いけど二人って付き合ってるの?」
と、たまたま資料のチェックをしている時に同僚に聞かれた。

向こうは冗談で言ったんだと思う。確かに接点あって一緒に居ることは多いけど、それは結構前からのことでごく最近というわけはない。そういうのに縁のない私と真面目な木手くんをからかいたいんだと冷静に考えていた。多分、木手くんも気付いたと思う。だけど、

「ええ、そうですけど何か?」

ごく当たり前に、自然に肯定。
そして、何事も無かったかのように仕事の話へと戻していた。


それから数時間後、木手くんに誘われて二人で居酒屋へやって来た。
店長が沖縄の人らしく懐かしい料理があるんだと言う。私は沖縄に行ったことがない、料理もテレビでしか見たことが無いと前に話したことがあったのを覚えてたらしい。

「アレ、何か問題でもありましたか?」

とりあえず生、とオジサマのような注文をした直後、木手くんはそう言った。

「問題はないかな」

そう言って、私も木手くんに習って私もとりあえず生と店員さんに伝えた。

「色々面倒だったのでつい」
「びっくりしたけどサラリと言ったなあとは思ったかな」
「彼、しつこいんですよ。君の番号とか教えろって」
「え?」
「個人情報でしょう?むやみに教えられないと話したらアレですよ」

幼稚ですよねと呆れ顔だ。
まあ、確かにそう言われればそうなんだけど。と、いうより直接聞いてくれたら教えてたと思う。会社用携帯はあるわけだし、それで良ければだけど。

「教えるのは簡単ですが、悪用されて情報流出先が俺だと分かっても嫌ですし」
「色々考えてくれて有難うね」
「別にあなたのためではありませんよ」

届いた生ビールを片手に「お疲れ様」と乾杯した。

木手くんと飲みに出掛けたのはこれが初めてではなく、こうやって誘われる事もあれば私から誘う事もある。勿論、都合が合えばと気が向いたら、をテーマにしているようなもので行けない日もあれば断られる日だってある。そう、学生時代の「放課後、暇?」と同じ感覚。

何でそうなったのか、何でそんな事が出来るのか、人は聞くけど質問の意味が分からない。
普通に、何となく、自然に?私たちは気付けば傍に居るような、そんな気がする。

「それにしても、私の番号とか聞いてどうするんだろうね」
「さあ?」
「てか、名刺渡しとこうかな。番号あるし...」
「でもソレ、会社のでしょう?」
「そうだけど?」

あ、そういえば...木手くんに教えたのは私のだったっけ。忘れてた。

「.........成程。あなた、随分と変わった思考の持ち主ですね」
「木手くんには負けるよ」

そう言うと木手くんは笑いながら「あなたには負けます」と言った。
つまり、少し変わった二人なんだろう。同じくらいマイペースで、何だかのんびりした...って、木手くんはそこまでのんびりさんではないけども、似た空気を持つ人なのかなーなんて今更思う。

「あ、木手くんにも名刺あげようか?」
「有難う御座います。ですが、俺はもう知ってますので結構」
「いや、木手くんに教えたの会社のやつじゃないんだ」
「俺のも会社のものではありませんよ。私用です」
「あ、そうなの?」
「はい。教えても差し障りがないと思いまして」

うん、差し障りはないと思う。無駄に連絡する事はしないし。
時々いるよね、内容も無いのに愚痴が言いたいだけで電話して来たなーと思うと延々と数時間話しちゃう子。いやね、お互いに会話が成立してれば楽しいんだけど一方的な子も居て...そういう子には教えたくないなーとは思う。男同士でもあるのかそういうの。

「私も多分同じ感覚で教えたんだろうね。会社のがあったの忘れてた」
「俺は覚えてましたけど私用を教えたんです」
「そうなの?」
「ええ。もしかしたら休日、誘われないかと思いましてね」

いやいやーいくら何でも休日まで迷惑は掛けるつもりはないよ。うん。

「では、これからは休日も誘いますね」
「へ?」
「ダメですか?」
「いや、ダメではないけど...」

職場で会って休日も会って?それじゃまるで...

「それが君の番号を知りたがっていた理由ですよ」

木手くんはそう言って「さて何を食べますか?」とメニューを差し出して来た。

(4/7)
[ 戻る付箋 ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -