テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

発売されたばかりの新作は私の睡眠時間をゴリゴリ削ってくれた。
いやもうなんて可愛らしいツンデレばっか揃えてるんだよコノヤロウ、と画面を見ながら萌える日々が続く。校門前で待つなよオイ、廊下で待ち伏せすんなオイ、の連続でとにかく萌える。こんなのリアルで存在してたら抱き締めるね私なら、だ。

そんなリアルの住人である私と言えば...
とにかく眠くて眠くてちょっと四時限目の体育を離脱させて頂いて(サボリとも言う)、屋上は日陰でゴロッと横になっていた。制服汚れても構わない、とにかくこの一時間プラス昼休みに睡眠を取れば午後からの授業も安泰だし夜も安泰。一石二鳥ってやつ。

「.........ふぁー」

眠い、とにかく眠い。でもアレを目の前に睡眠を優先することが出来ないあたりが阿呆だ。
分かってても止められないのがゲーマーの宿命ってやつ?そんなことを考えながら目を閉じた時、遠方で鉄扉の開く音が聞こえた...ような気がした。もし、これがあのゲームの流れなら...超可愛い女の子が「見ーつけた」とか言っちゃうんだろうな、とか思う辺り末期だろうか。

「エエ眺めやん」
「.........ふぁ?」
「これで膝立ててくれたら見えるんやけどなあ」

何その嫌な台詞...全然可愛くないし萌えないんだけど。

「.........そんな萌えるようなパンツ穿いてないよ?」
「うーわー女子回答としてアウトやアウト」
「てか下、短パンだし。で、何か用?」
「別に用なんてあれへんよ」

わざわざ視線を動かさなくても分かる。この声の持ち主は忍足だ。

「何なん、自分寝不足かいな?」
「......ツンデレが寝かせてくれないのさ」
「まーたゲームかいな。懲りんなあ自分。ほどほどにしとき」
「懲りる懲りないじゃなくてツンデレ研究と傾向と対策と...」
「やかましいわ」

ドサッと忍足も私の横に座り、気付いたら少し距離を空けてゴロンと寝転がった。
チラリと見た忍足の横顔は私とは違い、目の下にクマなんかない。だけど随分とお疲れな様子だ。また跡部が無理なトレーニングをさせたのだと思われる。

「けどなあ、正直考えさせられるわ」
「何を」
「プレゼント。ベタにぬいぐるみやっても反応うっすいし、アクセも喜ばんし」

何それ、同じゲームでもしてるのか?そう思って口にしたら私のお陰で興味出たから始めたらしい。
ふーんと軽く返事しながら忍足の愚痴とも言える話を聞いた。プレゼントは喜ばれない、電話してもそっけない、デートに誘っても断られるなどなど。

「それは相手のキャラを読む力が足りない。リアルでも役立つから勉強しろ」

会話を聞いてれば何となく分かることもあるだろうに。
例えば体の弱い女の子をバッティングセンターに誘っても来るはずがない。勉強が嫌いな子に図書館デートしようって言っても嫌だって言われるに決まってる。そういうのを会話で考えて色々読み取るんだよ会話で。

「そんなん役に立たへんやろ。あ、せや飴食う?」
「飴嫌い」
「ほなガム」
「ガムも嫌い」
「ほらな」

私で実験すな。というより何その持ち物...ジローくんか?

「それはチョイスが悪い。クッキーだったら食べたかもよ?」
「そう言うてダイエットしとるとか言うて断るんやろ」
「......まあね」

空を仰いだまま、お互いを見ることもなくやり取りは続く。
忍足はひたすらに面倒だ面倒だと言うけど、その面倒なのが可愛いと私は主張する。勿論、コッテコテにやられたら面倒だと思うかもしれないけど...まあ、それは忍足に向けられても私に向けられることはないので関係ない。女子はとにかく自分を可愛く見せたいものなのだ。

「時には例外もおるね」
「......私のことかソレ」
「別に。そう思うたんやったらそうやない?」
「......ならやっぱりツンデレ研究と傾向と対策と、」
「やかましいわボケ」

忍足はそう言って私に袋詰めのクッキーを投げ付けた。

(3/7)
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